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日輪の神様へ16

「それから退いてもらおうか。石田三成」
「―――!」
言葉と同時に身体を囲むように現れた紫色の火。それが己に向かってくるのを見て、石田は跳躍して避けた。
くるり、と空中で回転し着地する。
とん、と軽やかに稲荷の隣に着地したのは銀稲荷だ。再び戦闘衣を纏っている。
「なんだ貴様は…」
「私も稲荷だ。銀稲荷と呼ばれている。石田三成、貴様のような人間、嫌いじゃないぞ」
「は?知るか。…貴様も秀吉様の邪魔をするのか」
「貴様等人間界の事は人間界の者の好きにすればいい。私は天界の者共の不正を暴くだけだ。ただ、それ故にこいつと長曾我部元親に手を出されると困る」
「…なんだと?」
にやり、と銀稲荷は笑って片手で刀を引き抜いた。石田は苛ついたように刀を構える。ぞわり、と石田の殺気が膨れ上がる。
「こちらの都合で申し訳ないがな。だが悪いが豊臣の進行は止めさせてもらう」
「…ふざけるな…。秀吉様の歩みを止めるなどというその暴言を吐いた事、懺悔しろ!」
「ふ、ははは!懺悔しろ、そんな言葉を私に言うとは!愉快で仕方ない、…殺したくないのだがな」
「黙れ!秀吉様、あの者を斬滅する許可を私に!」
石田が床を蹴った。
銀稲荷は薄く笑いながら、目に見えないほどの速さの石田の斬撃を難なくさばいていく。
「速いな。私も見切るので精一杯だ」
「戯れ言を…!」
「戯れてなどおらん。これは正当な評価だ」
「ほざけ!貴様の評価など欲しくはない!!」
石田の言葉に銀稲荷は楽しそうに笑う。
「欲しいのは豊臣秀吉の誉め言葉、か?」
「物ノ怪風情が秀吉様の名前を口にするな!!」
「…。厳島、どうすればいい、この人間欲しくなってきた」
「知らんわ!!貴様の趣味だけは理解出来ぬ!!それより貴様…」
「…。私に嘘を吐いた罪は重いぞ、厳島。さて、石田。悪いが少しばかり、」
石田の突き出した刀を受け流し、その下をくぐり抜ける。
「!」
無防備な背が、銀稲荷の前に曝された。
片手をその背に当てる。
「被拘束担当になってもらう」
当てられた手が、まばゆい光を放った。


 「?」
突如上がった紫色の光に、豊臣の動きも止まった。その光はすぐに消える。
長曾我部はふらふらと立ち上がった。
「っ、はぁっ、はぁー…っそが…」
「やぁ、元親君」
「!」
「半兵衛」
いつの間にか、竹中が富嶽に姿を見せていた。ひゅん、と彼の武器、凛刀が鞭のように空気を切った。長曾我部は舌打ちをし、武器を構えた。
「半兵衛、何故ここにいる」
「三成君に任せた軍勢が突然動きを止めたから何事かと思ってね。三成君の事だから討たれてなんていないとは思うんだけど」
「…?」
竹中は未だによく現状を把握出来ていない長曾我部に、にこりと笑って武器を突き付けた。
「元親君、僕達は中国を攻めに来たのに何故君がいるんだい?元就君を守ろう、とでも?」
「アンタ等には関係ねぇ…ッ」
「君達は敵同士だったんじゃないのかい?」
「…ッ」
「まぁいいさ。君たちの関係など、正直僕らには関係ない」
「…あぁそうだろうよ」
「鬼!」
長曾我部は忌々しげに言い放った時、稲荷が富嶽の大筒から飛び降りてきた。長曾我部はもちろん、竹中や豊臣もわずかに目を見開く。
「稲荷さん!何しに来た!!」
「…稲荷?あれは妖狐かい…?」
「銀稲荷はどこぞ!」
「誰だ銀稲荷て…」
「髪が銀色の稲荷ぞ!」
「はぁ?なんでお「邪魔するぞ」ぐふっ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ稲荷と長曾我部の所へ、正確には長曾我部の上に銀稲荷が落ちてきた。
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