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日輪の神様へ2

「!長曾我部殿!!」
「よぅ。元気にしてるか?」
中国に着き、慣れた様子で港に降り立ち迷いなく足を進め城へ向かう長曾我部。途中で自分に気が付いた兵士に、長曾我部は笑って片手を挙げた。
兵士は迷いなく長曾我部に頭を下げる。
「長曾我部殿のおかげです!二日と開けずに…申し訳ありません」
「…どういう事だ鬼かぶれよ」
「いでっ!てめっ、食い込んでるだろうが!大人しくしてろ!」
稲荷は戦をしていた相手の兵士と妙に親密な長曾我部が理解出来ないらしい、采配をぐいと長曾我部の腰に突き立てた。その痛みに堪らず長曾我部は振り返り、ひょいと稲荷を首根っこを掴んで持ち上げた。
「!き、貴様っ、何をする!」
一方の毛利軍の兵士は持ち上げられた稲荷を見て真っ青になり飛び上がった。
「?!も、毛利さ…ッ?!」
「こいつはお稲荷様でよぅ。毛利そっくりな嫌な野郎だぜ」
「焼け焦げよ」
「うぎゃぁぁっ!!な、何しやがる!」
稲荷はどうやら毛利元就という男は自分に似ているらしい、と理解したらしい、呆れたように鼻を鳴らし、狐火を長曾我部に向けて放ちその手から逃れた。
長曾我部はため息をつきながら狐火がついた左腕をパンパンと払う。火には強いようだ。
「…で、毛利の野郎は…?」
「……、変わりありません」
「…そう、か………」
「……?」
「…、稲荷さん、アンタも会っていくか?」
長曾我部は自分を見る稲荷の視線に気が付くと、薄く笑った。先に浮かべた笑みとは、全く違うものだったが。


 「…こやつは病床なのか」
稲荷は急に静かになった長曾我部を訝しみながら、ついてきた部屋で眠る男を見下ろした。彼が毛利であるという。
「…、成る程確かに似ておるな」
「前回の戦の後倒れてそのままさ。…目覚めもしねぇ」
「…貴様とこの男の関係が分からなくなった。敵ではないのか」
「…毛利は………元就は、…」
呼び名が変わった事に、稲荷の耳がぴくりと動いた。そしてまた、呆れたように鼻を鳴らした。
「…何かと思えば、懇意にしておったのか。それも深く」
「…ッ…るせぇ」
「ほとほと人間は理解出来ぬ。懇意にしておるならなぜ戦うのだ」
「神様みてぇな存在には分かりえない感情だろうよ」
長曾我部はしっし、とでもいうように稲荷に向かって手を振った。彼自身は浮かない顔で毛利の顔の隣に座っている。さら、と長曾我部の指が毛利の髪を揺らした。
毛利はぴくりとも動かない。
「…、貴様、先の兵士は貴様は二日と開けずに来ているような事を言っておったが、貴様領地を放っておいていいのか」
「あぁん?アンタが壊されて困るのは富嶽だろう?ならアンタには関係ねぇ」
「…気に食わぬな」
さらりとかわされた事に苛立ちを感じながら、稲荷は長曾我部の隣に座った。
「…誰も守ってやってくれやしねぇ」
「?」
ぼそりと呟かれた言葉に稲荷は視線だけそちらに送る。長曾我部は胡坐の上に肘を突いて、その手の上に顔を乗せた。
「元就は守りたいもの、その為には何でもする、そういう野郎だ。だから敵も多いし、味方は少ねぇ。…倒れた時に、守ってくれるような野郎もいねぇのさ」
「同情か」
「いいや?俺はアンタの言う通り、こいつと懇意にしてる。深く、な」
「……、だから、情なのだろう?」
長曾我部の言葉の意味の違いが分からない稲荷は、苛立ちに尻尾をばしりと床に叩きつけてから長曾我部を見た。長曾我部は床が叩かれた音に驚いたように稲荷を見てから、苦笑した。
「同情じゃねぇよ。…こいつが守りたいものは俺が守る、それだけだ」
そして、そう言ったきり、毛利を見たまま黙ってしまった。
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