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日輪の神様へ17

「ッ、三成君!」
真っ先に声を上げたのは、竹中だった。
「!」
豊臣も目を僅かに見開き、ぎゅう、と拳を作った。長曾我部は目の前に浮遊するそれに、驚愕で目を見開いた。
「ひでよし…さま……は……んべ…さま…ッ」
「…よく喋れるな。普通なら人間は気を失う拘束なんだが」
「き…さぁ…まぁぁぁ…!」
「うぉ怖。…大したものだな…そう思わないか、厳島」
「我に振るな」
銀稲荷は自分が拘束した石田を見上げて小さく笑った。
石田は地面から10センチほど浮いたところに、十字架に磔にされたような形で拘束されていた。身体の周りを紫色の炎で囲まれており、それによって拘束されているようだ。
石田は人を射殺せてしまいそうな視線で銀稲荷を睨んだ。銀稲荷は肩をすくめた後、後ろからそんな石田の顎をつかんで前、つまり豊臣と竹中がいる方向へ向かせた。ぎり、と石田の歯が鳴る。
「…、一体どういう事かな。どうやら確かに君達は稲荷神らしい、元親君が狂っていなければね」
「…貴様は頭がいいようだな、現状把握が早い。…、本来なら私達が人間の戦に介入するべきではないし、そもそも私達には人間の行く先など興味はない。栄えるも滅びるも好きにすればいい」
「…へぇ?」
「だが、間が悪かったな。今現在この船は厳島…そこの稲荷の社となっていて、私も仕事で長曾我部元親と厳島に用がある」
「き、さま…ッ半兵衛様に向かってそのような…っ!」
「…石田、その腕を使い物にならなくされたくなかったら黙っていろ」
「ッ、?!…が、ぁ…ッ」
くる、と銀稲荷の右手が回されると同時に、石田の右腕にまとわりついていた炎が石田の右腕を締めあげた。みしり、と音が鳴り小手にもヒビが入り、石田は痛みにか目を細めた。
「三成君…!」
「…ッ、半兵衛様、私などにかまわぐっ?!」
「…だから、黙れ。お前が話しだすと話が長くなる。…次は口の中に貴様の刀突っ込むぞ?」
「くっ……」
話している途中に口の中に指を突っ込まれ、石田は小さく唸った。持つのが面倒だったのか、石田の無名刀は石田と同じように宙にふよふよと浮いていたが、それの切っ先が僅かに石田の方を向いた。
相変わらずの視線を銀稲荷に向けながらも石田は黙った。黙った事に満足したのか、銀稲荷は楽しそうに笑った後、石田の肩に顎を乗せ差し込んでいた指を抜いた。
「…それで、君はどうしたいんだい?…僕らに退けと?」
「…話が早くて助かる。長話は嫌いなんでな」
「その為の人質として三成君を拘束した…というわけのようだね」
石田に負けず劣らずの視線を送ってくる竹中に銀稲荷は肩をすくめた。
「そう怖い顔をしてくれるな。こちらの用事が済むまで待っていてもらいたいだけだ。そんな不利益な話であるわけでもないだろう?」
「…もし僕達がそれを断ったら、三成君を殺しでもするつもりかい?」
「殺す?そんな勿体ないことするか。…ただもし、貴様等がこの申し出を断るのなら、私の全ての力を使ってでも貴様等を滅し、止めるつもりだがな。私は仕事をするだけだからな。他のものがどうなろうと興味はない」
「…」
「あ、ついでに断るのならこいつは貰っていく」
「、な」
「っ、ふざけるな!誰が、物ノ怪なんぞに…っ」
噛み付くような石田の怒鳴り声に銀稲荷は驚いて飛び上がった後、楽しそうに笑った。
「その真っ直ぐな所が気に入った。だから貴様等がいらないと言うのなら貰い受ける。貴様がどれだけ豊臣秀吉の事を想おうと、記憶を消してしまえば何も問題ないしな。…まぁ、さすがにそこまではしないが」
「……仕方ないね…元々元就君攻めに来ただけなんだし、構わないかい、秀吉?」
竹中の言葉に豊臣は頷いた。
「いいだろう、稲荷君。いや、銀稲荷、だったかな?君の仕事とやらが終わるまでは待ってあげよう」
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