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日輪の神様へ7

「…。その言葉…ある意味じゃ、体のいい言い訳だな」
「言い訳?そうか?」
「あぁ。理解出来ない物を無理矢理納得しようとしてる。そんな簡単に納得しちまっていいのか?」
「悪いか?」
「あ、いや、悪くはねぇがよ…つまらなくねぇのか?」
「つまらない?」
「そんな風にして解決させちまうのが、だよ」
「理解出来ぬままでいるよりはずっとマシよ」
「そうかい」
長曾我部は手酌でお猪口に酒を注ぎながら、クスリと笑った。片方だけの目が、どこか寂しげに揺れる。
「まぁ、アンタがいいならいいんだけどな」
「…そう言えば、豊作が攻めてくると言っておったな」
「いや、豊作じゃなくて豊臣」
「豊臣か。豊臣とよとみトヨトミ…よし、覚えた。豊臣は何故四国を攻めるのだ?」
「そりゃあ勿論、天下を統一するためさ」
「天下統一、か…。統一してどうするのだ?」
「は?」
長曾我部は驚いて稲荷を見た。稲荷はぴん、と尻尾をたて、揺らした。
お猪口を静かに床に置く。
「統一して全ての上に立ち、何が楽しいのだ?」
「楽しいって…」
「統一した者が死ねば、その均衡なぞ簡単に崩れる。全ての者が手を結び、並列して治めればよいではないか」
「…、それが出来ねぇから戦になるんじゃねぇか」
「…だから、武力行使か」
「あぁもう、難しい言い方すんじゃねぇよ!…、確かに、力でねじ伏せてるだけなのかもしれねえがよぅ…全てが全てそうじゃねぇよ」
「例えば、誰だ」
「家康…とか?」
「いえやす?」
「徳川家康、俺の友人だ」
「…その男は武力を使わずに全てを収められるのか?ならば何故しない」
「…………………」
「その男も結局は武力でしか全て収められん、か」
「っ、だけどよ、」
「抱いている大志が違うだけで結局している事は同じだ」
「いいや、同じじゃねぇ!豊臣のように敵対するものは全てねじ伏せるようなやり方は家康はしねぇ!」
「どう言おうと戦うという事は相手を武力を持って切り捨てねじ伏せる事だ!敵対する者を殺している事に違いはない!!」
「…ッ」
「…貴様はお人好しだ。貴様にそう思わせるその家康という男は、ある意味では狡猾で頭がいいな。同族殺しを上手に正当化している」
「―ッ!!てめぇぇっ!!」

「何を怒る。貴様等は同族殺しを正当化させようとしているただの殺戮者だろう」

言い返していた長曾我部だったが、言い返せなくなった。稲荷は言葉に詰まった長曾我部の顎をくいと指で掴んで持ち上げた。至近距離で長曾我部の目を見据える。
「敗者に対して厳しいか厳しくないか。違いはそれくらいだろう。厳しくない者は好まれるのだろうが、そういった者には真に忠誠を誓う者は少ない。貴様の嫌う豊臣のような者には、真に忠誠を誓う者が多い。何故か分かるか?それは貴様等人間が、その者の行いが全て正しいと思っていないからだ。貴様等人間は、逆境に立ち向かう者に憧れる。間違いかもしれぬ、されど己の目指すものの為なら己が悪者になっても構いはしない―そういう者には真に忠誠を誓う者がいる。まぁ、敵対する者も多いだろうがな。貴様の好きな家康のような者は全てに優しいから居心地がいい。だが、優しいゆえにその優しさがいずれ恐怖となる。何故か?その者がはっきりしていないからだ。本当に自分を信用しているのか確信する事が出来ない。だから、忠誠を誓う者は少ないのだ。敵対する者は少なくとも、な」
「………………」
「…、だが貴様はどちらかといえない。その間のような存在だな」
「…は?」
長曾我部は目を逸らしたいと思いながらも、稲荷をにらみ返した。
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