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葱と牛蒡とツインテール17

「…そういうのよくないよ」
「……何?」
しきの言葉に、ぴくっ、と三成の指が跳ねた。しきは僅かに三成の方ににじりよった。そっぽを向いていた三成がしきに視線を向ける。
「あなた自身の意思がないのは、よくないよ」
「…………」
「あなたはあなたであって、半兵衛の操り人形じゃないし、自分の考えを持ってない人なんて、」

「貴様に何が分かる!!」

不意に、三成が怒鳴った。しきはびくっ、と体を跳ねさせる。三成は眉間を寄せ、怒ったような表情でしきを睨んだ。
「…貴様に何が分かる。…………、ろくに戦ったこともない女風情に、何が分かる!!」
「!」
「半兵衛様は正義だ、だから従っている、それの何が悪い?!」
「正義だと思うのは別に悪くないよ。ただ、馬鹿みたいにハイハイと従ってるだけなのはどうなのって言ってんの!自分で考える事しなきゃ、意味ないでしょ?!」
「きさま、」
しきの勢いに三成は不愉快げに更に眉間を寄せる。
「言うこと聞くだけなのはいい部下とは言えないよ!自分で考えて行動できるよう人間じゃなきゃ、いざって時に使えないでしょ!」
「……よく分かった」
「え?」
突然三成は静になり、ぼそりとそう言った。思わぬ反応にしきは思わず拍子抜けしてしまう。
だが三成の顔を見ると、しきのいう言葉に納得したというよりかは、絶望したーそう言っているように見えた。
「…貴様は恵まれた人間なのだな」
「え…っと……?」
「…そんな生き方は私は知らん。だが、いざという時いざという時と、計画性のないことばかり…それとも何だ?半兵衛様が急死なさり、いざという時が来るとでも言いたいのか貴様は」
「!…べ、別にそういう意味じゃ、」
思わずしきはぎくりとするが、そうだよとは言えるはずもなく、曖昧にごまかす。三成は、だん、と刀で床を叩いた。
「…半兵衛様の意思、秀吉様の想い、それが私の意思であり想いであり、願いだ!」
「…!」
「へーこらと私が従っているだけだと思いたいのならそう思っていろ、貴様の同意など私は求めていない、そんなものは必要ない」
「………」
「貴様に私を語られる筋合いはない。貴様が半兵衛様を悪だと見なそうと、そんなことは私には関係ない。そういう輩に絶望を与えるのが私の刀だ。私は半兵衛様と秀吉様に従う。それが私の生きる道だ」
分かったか。
三成はそう言うと再び座し、ふんっ、と鼻を鳴らした。しきは、むぅ、と黙ってしまう。
「(…うーん…ちょっと言い方間違えたかな…)……」
「……」
「(…でも、最初の言葉…。三成が言いたかったことも、なんか違ったんじゃないかな…)」
そうは思っても、聞くことは憚られる気がして、しきは口をつぐんだ。


 翌日。しきが目を覚ますと、寝る前とオナジ体勢で三成が座っていた。
「……おはよう、ございます」
「…」
「寝ました?」
「貴様には関係ない」
「…それもそうだけど」
三成のつっけんどんな態度に、つまらない、と思ったが、しきはその場に体育座りの体勢で座った。
「………」
「………」
沈黙が続く。やることもない牢獄生活は、退屈なものになりそうだ。
「…あの」
「無駄口を叩くな」
「………」
しきは、むぅ、とむくれたが、どうしようもなかった。
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