スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

葱と牛蒡とツインテール3

少ししてから、しきは目を覚ました。
「……うう…」
「おい、大丈夫か」




「ぎゃああっ!」
しきは思わず飛び上がった。その様子に、傍らに腕を組んで立っていた小十郎は顔をしかめ、はぁ、とため息をついた。
「…驚かせちまったみてぇだな。悪かった」
「へっ?!あ、いや、そんなことはっ」
「無理すんな、俺の顔見てぶっ倒れただろ?」
「いえっ、それは貴方に見惚れただけです!」
「倒れた衝撃で頭でも打ったか?」
しきの発言に小十郎は驚いたようにしきを見た後、心底真顔でそう尋ねた。しきはぶんぶんと頭を振って否定するが、小十郎は身分の違い故の我慢ととったらしい、困ったように笑っただけだった。
その笑顔にしきの顔がぼんっと赤くなったのだが、そういうところには気が付かないようだ。
「…ところで、トネに聞いたがお前、家に帰れないらしいな」
そこで、小十郎はふ、と思い出したようにしきにそう尋ねた。表情は固い表情に戻っている。
「えっ?あ、はい…」
「…とうきょうなんて地は聞いたことがねぇ。だがお前、ならどうやってここに来た?」
「……えっ、と……。信じてもらえないかもなんですけど……」
「…言ってみろ」
「…………気がついたらここにいました」
「…」
小十郎はしきの答えに眉間を寄せ、じろ、としきを睨んだ。しきはそんな視線に小さくなる。
見つめられてどうしようと最初は思ったが、そんな悠長なことを言っていられるレベルに結構怖い。かなり怖い。
「いや、ほんと、分からないんですよ、うたた寝してただけなのに気がついたら山の中だし東北きてるし…」
「…………念のため聞くが、嘘ついちゃいねぇだろうな…」
「嘘なんかついたら余計帰れませんっ」
しきはぶぅ、と顔を膨らませ、むくれた。
小十郎はしばらくしきを睨んでいたが、嘘をついていない、と判断したか、睨むのをやめた。
「…それもそうか。いや、悪いな。このところどうも物騒でな。妙な格好をしていたというし、くの一の可能性がない訳じゃ無かったからな」
「!…そう、ですか」
「悪いがとうきょうなんて地は知らん。お前にも分からねぇとなると、無理かもしれねぇ」
「…ですよねー……」
小十郎の答えに、分かっていたこととはいえ、しきは僅かに落胆した。自分が戦国BASARAの世界に何故かトリップしてしまい、小十郎に出会えたことは歓喜の限りであるとはいえ、突然消えたことで家族や友人は心配するだろう、と。
「…。トネの所はこの前娘が嫁に出たばかりでな、お前を預かってもいいと言ってる、が、どうする」
「トネさんが?…じゃあ、お言葉に甘えようと思います」
「そうか。……あと、これは個人的な事なんだが」
「?」
「…その右目…どうしたんだ?」
「えっ!あ、これはちょっと昔に、怪我して潰れちゃったんです」
後遺症とかはなんですよ。
少し笑み浮かべながらそう言うと、小十郎はどこか安心したように、そうか、と呟いた。
「?私の右目が…どうかしました?」
「っ、いや、なんでもねぇ。妙な眼帯をしているから気になっただけだ」
小十郎はそれだけだ、というと組んでいた腕をとき、傍らに置いていた農具を取った。
「俺は仕事に戻る。お前は頭打ってるみてぇだからもう少し休んでろ」
「んなっ!!打ってませんって!」
「はいはい」
小十郎はしきを軽くあしらうと、農作業に戻っていったのだった。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2013年04月 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30