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葱と牛蒡とツインテール9

「…夜陰に乗じて逃げ出す者はなし、か……」
小十郎は小高い丘から城から街道へ続く道を見下ろし、ぼそりとそう呟いた。
川中島の戦で、兵の中に豊臣の間者がいることが分かった小十郎と政宗は、帰城した際、間者探しをすること、そしてそれ相応の仕置をすることを匂わせておいた。だから、夜闇に紛れ、逃げ出す者がいないか、確認に来たのだ。
小十郎は踵を返すと、自分が育ている作物の葉に触れた。至って順調に育っているそれに、ふ、と口元が綻ぶ。
「そんな顔もできるんだね、片倉君」
「!」
不意に聞こえた声に、小十郎は僅かに驚きながらも、刀に手をかけ振り返った。木々の間から、ゆらり、と細身の男が姿を現す。
「お前は…!竹中半兵衛!」
小十郎の前に現れたのは、豊臣軍軍師、竹中半兵衛だった。
半兵衛は妖艶な笑みを浮かべる。
「君を勧誘しに来たんだよ、片倉君」



 「ぜー…はー……。やばい、見失った…」
その頃しきは、早くも小十郎の姿を見失っていた。走りにくかった為に裾を割り開いていたので、どことなく色っぽい。
走り疲れたしきは、その場に座り込んだ。だが、ふ、とあることに気がついて辺りを見回した。どことなく見覚えがある。
「…あ…ここ欧州包囲網のステージの!」
しきは、ゲームでやったステージを思い出した。景色がにているのだ。
「…じゃああの畑があるところの方かな…丘もあるし…行ってみよう!」
しきは、ふんっ、と気合いを入れなおすと、勢いよく地面を蹴った。

十分ほどして、走っているしきの耳に、鈍い音が聞こえた。
「!」
その音は、殴られたような音に聞こえた。しきは慌てて、だが静かに目の前の丘を登った。
木の影に隠れつつ、前に進む。と、開けたところに出た。
「!!」
小十郎が豊臣兵に囲まれ、リンチされていた。がくり、と小十郎が膝をつく。
「ッ!」
とっさにしきは奥に見えた半兵衛目掛け、弓を構えて放った。
ひゅん、と音をたてた矢に半兵衛が素早く気が付き、小十郎の腕を拘束していた剣を解き、矢を弾き返した。
「ッ、誰だ!」
「(やっば!!!)」
しきは自分が少しばかり浅はかだった事を後悔した。
だが、もはやどうしようもない。しきは半兵衛の言葉にうろうろとしている豊臣兵目掛けて矢を放った。
矢は兵の腕に刺さり、血が吹き出す。
「ッ!!」
しきは思わずたじろいだ。しきは出血沙汰に慣れていないのだ。
矢の飛んできた方向から察したのだろう、がさがさと兵がこちらに向かってくる音がする。
「〜〜〜ッ!ええいままよっ!」
しきは兵が来る方とは反対の、半兵衛がいる方向へと飛び出し、出ると同時に弓を構え半兵衛に向けた。
半兵衛はわずかばかり驚いたようにしきを見る。
「…女の子?」
「!!おまえ…ッ!」
小十郎の焦ったように声に、しきはちら、とそちらを見た。
アニメでは時間帯的にか描写されていなかったが、小十郎は傷だらけで、唇や額からは血が滴っていた。
しきは恐怖に震えながらも、きゅ、と唇をかんだ。
半兵衛は僅かに震えるしきに気が付き、ふふ、と笑った。
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