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葱と牛蒡とツインテール16

「…考え直してくれるね?片倉君」
「何をしようと無駄だ。俺は豊臣に降るつもりはねぇ」
「……。そういえば、君は彼女からこの先のことについて何か聞いたのかい?」
「何?……お前、まさか」
小十郎は驚いたように半兵衛を見上げた。その表情にどこか満足げに半兵衛は笑う。
「聞いていないようで何よりだよ」
「…あいつが話したのか」
「いいや?彼女は自らは何も。あぁ、念のため言っておくけど、まだ何もしていないよ」
「………あれだけの対峙でよく分かったな。…と、いうことは、あいつの言っていた豊臣秀吉の話、」
「君は知らなくていいことだ。彼女も表面的にしか知りはしない。僕以外の誰も知らなくていいのさ、あれの真実なんてね。次来るときにはいい返事を期待しているよ」
半兵衛はまた小十郎の言葉を無視すると、言葉を遮るようにそう言い、さっさと座敷牢を出ていった。
小十郎は折れた刀に手を添え、目を伏せる。
「…貴方様は無事であると、信じております。政宗様」



 「家康ぅっ!いい加減貴様は出ていけ!どうせ貴様まだ自分の仕事を終えていないだろう!」
「いたたたたたっ!痛いぞ三成!そんなに捻ること無いじゃないか」
「喧しいっ!大体貴様はいつもいつも」
「(うるっせ)」
東にある座敷牢に、家康と三成の声が響き渡る。しきは牢の中からそれをぼんやりと眺めていた。
「…これからどうなるんだろうな……」
「なぁしき殿!」
「は、はい?」
「その髪の毛はどうなっているんだ?半兵衛殿もなかなかふわふわとした頭だが、貴女の髪はもっと面白い!」
家康はそう言ってにこにこと笑った。気持ちは分からないでもないが、面白いと言い放つあたり、若干どこか抜けている。
「…は、はぁ……」
しきも曖昧に笑うしかない。
変わって、三成は家康の発言に勢いよく立ち上がり、刀の柄を掴んだ。
「貴様ぁぁぁ!半兵衛様をふっ、ふわふわだとぉぉぉ?!」
「いちいち突っかかるなよ三成、短気は損気だぞ?」
「そんなことはどうでもいい!そこに直れ家康っ!」
「半兵衛殿の髪の毛がふわふわなのは事実だろう?な?」
「いや、私に聞かれても…」
「刃に咎を…」
「おっと三成!それは無しだ!じゃあな!」
「!待てッ逃げるな家康ぅ!」
「(おもしろ)」
しきの見張りという仕事があるからか追うことは出来なかったらしい、牢の前でぎりぎりと歯軋りをする三成にしきはそう思った。
三成は、ふん、と鼻を鳴らすと刀を納め、しきの姿が見える位置に座した。生真面目な所を象徴するかのように正座だった。
「…足痺れないの?」
「貴様には関係ない」
「いざって時に痺れて立てないってなったら嫌じゃない。恥ずかしいし」
「………」
三成はぎろりとしきを睨み、ぷいとそっぽを向いた。
「正座には慣れている、痺れなどしない」
「それは凄い」
「…馬鹿にしているのか…?」
「えぇぇ?!いやいやいや、人の発言を後ろ向きにとらないでよ!」
「…ふん」
三成はつまらなそうに鼻をならす。しきは三成と話をしてみようと思った。
「…ねぇ」
「黙れ」
「なんで半兵衛…殿?が、私を逃がしたくないかは知ってるの?」
「………。貴様は、理由がなければ従わないのか」
「えっ?」
三成は少しの間しきを見た後、そう問うた。しきは驚いたように三成を見る。
「私は半兵衛様の命に従う。どんな理由があろうとも、そんな事は私には関係ない。半兵衛様は間違ったことをする御方ではない」
「…」
しきは、ぐ、と拳を作った。
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