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もうお前を離さない271

「テメェ、さっき言ったことを真田の前でも言えんのか?石田の所には親友がいるんだろうが。テメェはそいつにもさっき言ったことを言えんのかよ!!」
「政宗様!」
「五月蝿いなァ…。アンタに何が分かんのさ…」
「なんだと…?」
宮野は億劫そうにそう言うと、伊達の手をぱしりと叩いて払った。
「忠勝!片倉殿!」
「!!!!」
「徳川…一体何があったのか、教えてもらいてぇんだが」
「ワシにもよく分からないんだ。…独眼竜はどうしたんだ?」
伊達は徳川の方を一度だけちらと振り返っただけで、視線をすぐに宮野に戻した。
宮野はふらふらとし、へら、とした笑みを浮かべながら空を見ていた。
「私はさぁ…昔から、友達のが家族なんかよか大切だった…」
「あぁ?」
「だから、友達を侮辱する母親が大嫌いだった。殺したいくらい嫌いだった」
「…………」
「その母親が漸く死んだと思ったらー私は世紀の大悪者。…私が嫌いなら私を責めればいいだろうに。どうして人間ってゆーのは関係のない友達まで否定するかなぁ。私は私のせいで友達が責められるが嫌だった。だったら私は、全てから憎まれたい…その方が気が楽だ」
「…ッ…………」
「愛されるのは嫌だ。…巻き込みたくない。1人になれたら誰も傷つけなくて済む―――」
「…ならどうして真田の気持ちを受け入れた?」
伊達の言葉に宮野は笑ったまま伊達を見た。
「…拒否するのが嫌いだから。否定するのが嫌いだから」
「情けって事か…?」
「情けをかけられるほど偉くないよ。それに、幸村は私の世界の人間じゃなかった。いずれ世界からいなくなる。そう分かってたからかなぁ」
宮野はそう言うと、電池が切れたかのように不意にその場に倒れた。徳川が慌てて駆け寄ったが、伊達は黙って宮野を見ているだけだった。

 宮野は翌日になって目を覚ました。
「頭痛い…あんず酒一気飲みしちゃった時と同じやん……」
「…、ようやく起きたか」
「あー独眼竜おはようございますー」
「…。…アンタ、昨日の事覚えてるか?」
「昨日?……いや、覚えてませんが…何かしました?」
伊達の問いに宮野は首を横に振ってそれから傾げた。伊達はじ、と宮野を見つめ、それが嘘ではないと判断すると宮野の前に座った。
「お前は言った。仲間などいない。信頼も友情も、些細な事で崩壊する。人間など嫌いだ。…そして、全てに憎まれたい…ってな」
「……あちゃー…そうですか」
「これはアンタの本音なのか?」
「………昔の本音ですね」
薬が抜け、正常な状態に戻ったらしい宮野は悲しげに笑ってそう答えた。
伊達は静かに先を促す。
「…、疑いが晴れた…って訳じゃありませんが、証拠不十分で捕まらなかった直後はしばらくそう思ってましたね。友達として…接せられるのが、優しくされるのが辛かった。いっそのこと嫌いになって欲しかったです」
「…なんでだ」
「私だけが傷つくのならばいい。仲が良いというだけで、大好きな友達が傷つけられるのは見たくなかった」
「…アンタの友達とやらに、そのことは言ったのか?」
「言いましたよ。でも、みんな優しいから、他の人間のように嫌う事はその罪を認めることだ、私達は無罪だと信じてる。…そう言って、ずっと傍にいてくれた。…私はそれが嬉しくて辛かったです」
伊達は宮野の言葉に僅かに目を細めた。宮野はその伊達を見てくすりと笑うと、頭を押さえながら立ち上がった。
「ま、その内大丈夫になりましたけどね」
「What?」
宮野は薄く笑みを浮かべた。
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