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もうお前を離さない253

「随分な立場じゃねぇか。なめてんのか?」
「いいえ全く。知っているストーリーとは全く違う展開になっているので戸惑ってすらいますよ」
「それだけEndingを知ってるのにまだ和睦を願うのか?」
「なら教えてあげましょう独眼竜!」
突然声を張り上げた宮野に伊達は驚いて宮野を見た。そして、宮野の顔を見てさらに驚いた。
悔しさ、悲しさが入り交じった、泣きだしそうな顔をしていたのだ。
「石田三成が主人公の場合、関ヶ原で徳川家康を殺すルートと貴方の暴言に腹立って貴方を殺しにいくルートの2つ」
「お、俺の暴言だ…?」
「徳川家康が主人公の場合、関ヶ原で石田三成を殺すルートと先に石田三成を殺して天下を統一する3ルートの4つ」
「…、それがどうした?」

「どちらも関ヶ原では泣きます」

「…は?」
伊達は宮野の言葉をはかりかね、間の抜けた声を上げた。宮野はきっ、と伊達を睨む。
「石田三成は自分が太閤秀吉の為にではなく、自分が生きるために徳川を目指していると気が付いてしまったため。徳川家康は割り切ろうとしても割り切れず、友を殺してしまった後悔から。私は徳川の事はまだ嫌いです。好きじゃありません。三成さんはどちらかというと好きな方です。だからどちらにも後悔してほしくない。だから和睦をさせたいと思っているんです」
「…だが……どう考えても無理だろ」
「実はこの世界は二種類ありましてね。徳川家康が裏切る話と貴方が秀吉を殺す話とあるんですよ」
「は?!」
「貴方が秀吉を殺した方では和睦出来ています」
「…。それはそれが俺だからだろ。裏切ったのとは大きく違う」
伊達の言葉に宮野はうすくわらい、視線を逸らした。
「そうですね。でも私はそっちの話を見て、出来ないことはないんじゃないかと思ったんです」
「…石田の恨みは、俺が奴に抱く怒りとは比にならねぇ。無理だ」
「無理だと思ったら諦めるんですか?意外ですね」
「そういう事じゃねぇ!」
「私はいくら無理だと思っても諦めたくないものは諦めません!人の命がかかったものならばなおさら!!」
「ッ、」
「それに!貴方に言ったように私はその為にここに来た!諦めるのはここに来る為に犠牲になってくれた人の犠牲を無駄にすることになる、それだけはしたくない!」
一息にそう叫んだ宮野は視線を伊達に戻した。伊達は困ったような不愉快そうな表情を浮かべていた。
「…、だから私は…諦めません」
「…他人の為に自分の人生は無駄にすんのか」
「…この世界は…私の生きる糧でした。皆強い志を持っていて、私はそこに憧れた。私はこの世界の人が好きなんです。…その世界の為に生きられるのは、私にとっては喜びです」
「…You are crazy」
「そうかもしれませんね。でも私はそれがいいんです」
宮野はそう言って伊達を振り返り、にこと笑った。伊達は目を細めて宮野を見据える。
「さぁて…と。長話になりましたね。そろそろ眠いです…まだ何かありますか?」
「…、いや」
「なら、今日はここまでにしましょう。独眼竜も早く寝ないと蓄積した疲れは取れませんよ」
宮野はそう言うと伊達に背を向けた。伊達は暫く宮野の背を見つめた後、立ち上がり部屋から出た。
入り口で宮野を振り返る。
「宮野」
「はいー?」
「俺はそう簡単にお前の案に賛成はしないぜ。納得させてみろ。Are you OK?」
「ふふ、望む所です」
宮野の返答に伊達はにやりと笑うと、夜闇の中に消えていった。
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