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もうお前を離さない259

「そうよね…市の運命を…炎色さんに背負わせてはダメよね……」
「…!」
「大丈夫…市、ちゃんと答え見つけるわ…」
市はそう言うとぎゅうと宮野を抱き締め、そしてそっと宮野から離れ静かに立ち上がった。宮野は市を見つめ、何かを悟ったか、ぐ、と目をつぶった。
「ありがとう炎色さん…おやすみなさい……」
「…お市さん」
「なぁに…?」
「…、私は、運命って言葉が嫌いです。貴女の進む先に道はない。道は貴女が切り開くもの。だから、運命だから、みたいに割り切る事はしないでほしい、…そう、思ってます。だから、嫌だ、って思ったら、帰ってくるんですよ?義務感で、無理に進んだりはしないでください。貴女が望む方へ、歩いていってください」
「………うん…うん…。…ありがとう……市、頑張るね…」
市は薄く笑うと、ふらふらと雨の中に向かって歩きだした。ずばっと勢い良く飛び出した闇の手が市の頭の上にかかり、市を雨から守る。

市はそのまま陣営の外へ一人歩いていった。宮野はいつの間にか日が暮れ、闇夜になったその中へ消えていく市の背を見ながら、固くこぶしを握り締めた。
「………ッ」
宮野は、ぎりと奥歯を鳴らした。

 「宮野殿!宮野殿ぉ!!」
「…うるさい」
翌朝、陣営はざわざわと騒がしかった。宮野は徳川の声が聞こえても体を起こさず、部屋の隅で毛布にくるまっていた。
どたどたと走ってきた徳川は、普段は起き上がっている宮野が寝転んでいるのを見て一瞬驚いた後、宮野に近寄った。
「宮野殿!お市殿が…!」
「…はい?」
宮野は漸く億劫そうに起き上がった。徳川は不思議そうに宮野を見た後、はっとして宮野の前にしゃがんだ。
「今朝方からお市殿が見当たらないんだ!昨日の夜、会わなかったか?」
「…………………」
「…宮野殿?」
「……。寝ます」
「?!」
宮野はぼふっと再び横になってしまった。徳川はあたふたとしながらそっと宮野の頭のそばに手をついた。
「ど、どうしたんだ宮野殿…!?どこか体調が悪いのか?」
「…悪いのは体調じゃありません…」
「…?」
「……お市さんは知りません。少し放っておいてください…」
宮野はそう言うと毛布の中に頭を隠してしまった。徳川はいよいよ慌てる。
「せ、せめて理由を…」
「……1人になりたいんです。今私泣きそうなので」
「な、泣きそう?!ますます何があったんだ?お市殿に会ったのか?!」
「…隠してもいずれ分かるか。…お市さんは出ていきました」
「…え?」
間抜けた声を上げた徳川に宮野は勢い良く体を起こした。驚く徳川を横目に見る。
「…己を呼ぶ声が聞こえる。私は行ったほうがいいのか、と聞かれました」
「そ…それで?」
「これは貴女が決めなきゃならない選択だと、言いました。そうしたら、ちゃんと答え見つける、頑張ると言って……昨日の夜、雨の中出ていきました」
「1人でか?!なんで止めなかった!?」
徳川はそう怒鳴った。珍しく怒りを見せる徳川を、宮野は静かに見つめた。
「…それが、お市さんの選択だったから」
「だからってッ!!」
「貴方だったら止めたと?!」
「当たり前だ!!」
「彼女がそこへ行くことを望んでいる、それでも貴方は行くなと言うんですか?!」
「ッ、お市殿はっ!!」

「お市さんは貴方の人形じゃないっっ!!」

「ッ!!」
「あの人の生き方はあの人が決めるべき!そしてあの人は選択した!私にそれを否定する権利はないっ!」
宮野はそう怒鳴った。
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