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もうお前を離さない244

「おのれ長曾我部ぇぇぇ…」
「…まぁ、あの人の事ですから深い意味はないと思いますよ」
「主は時折辛辣よなァ」
「!大谷さん」
ぷるぷると怒りに震える石田とさほど気にしていない村越の所へ、大谷がふよふよとやってきた。
「三成、真田への使者の事だが、真にこやつに行かせるのか?」
「!」
「なんだ。不服か?」
石田はふーと息を吐き出し怒りを鎮めると、ゆっくり大谷を振り返った。
「ヒヒッ、不服など思うわけがなかろ。主がよいというのならよいのであろう」
「あ!聞いてください大谷さん、合格って言ってもらえました!!」
「左様か左様か」
わーいという文字が後ろに見える村越に大谷はヒッヒと肩を震わせて笑い、石田を見た。石田も大谷を見る。
「…だが、北条は家康と手を組んだ…村越1人では無理だ。刑部、頼めるか」
「!」
「ヒヒ…使者というより真田への援軍よな」
「家康が動いていないのが気に掛かる。……奴にこれ以上奪われてたまるものか」
石田はそう呟くと2人に背を向け城に入っていった。
その背を見送った後、村越は大谷に向き直った。
「大谷さんっ、私、足引っ張らないように頑張ります!!」
「ヒッヒ…主は元気よな。そうさな…お転婆はせぬようになァ」
「ぜ、善処しますっ」
「…ヒヒ。さて、では参るとするか。主もよう休んでおけ。明日明後日には発つことになるであろうが、そうしたらその二日後には恐らく戦になる故な…ヒヒッ」
「はい!お疲れ様でした!」
村越は元気よくそう返すと大谷の後について自分も城の中に向かって走った。
「…絶対に幸村さんは助けてみせる。だから死んじゃダメだよ黎凪…!」
そう、呟きながら。



 「真田の大将!」
「?!…、佐助か」
同時刻上田城は、束の間の休息を得て静まり返っていた。そんな中、中庭で槍を振るう真田に猿飛は駆け寄った。
「腕の痛みが引いてきたのでな。少しは握っていないとなまってしまうゆえ」
「…そりゃそうだろうけど。早く寝な、明日に響くぜ?」
「…、北条方に何か動きは?」
「さぁ…俺様達が見られる限りではこれといった動きはない」
「そうか…」
「まぁこうも大軍で囲まれるとなかなか動けないしさ。…でも真田の大将、昼間の策は完璧だったぜ?」
「!そ、そうか?!」
暗い様子を見せる真田に、猿飛はどこかおどけるようにそう言った。ぱぁ、と真田の顔が明るくなる。
猿飛は真田に分からない程度に小さく息を吐きだして笑って見せた。
「大きな犠牲は出なかったし、相手方には大きな打撃を与えられた。しばらく北条も容易には動かないさ」
「うむ……そうだな」
「……どうやら心配事はこの戦だけじゃないみたいだな?」
「!」
猿飛は真田の顔を覗き込みそう言った。かぁぁ、と一気に真田の顔が赤くなり、猿飛は小さく吹き出した。
「な、な、なな…っ」
「あーはいはい黎凪ちゃんの事ねー。分かりやすいなぁ大将はっ」
「や、揶揄るなっ!…仕方ないだろう、忍殿の消息も知れぬのだ…」
にやにやと笑う猿飛に真田はぷい、と外方を向いた。猿飛はそんな真田ににやにやしながらも苦笑し、腕を頭の後ろで組んだ。
「…ま、そうだけどさ。北条を倒さない事にはどうにも行かないさ」
「分かっておる。…、そうだ、三成殿はもう大阪に帰られたであろうか」
真田はふ、と思い出したようにそう言った。
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