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賽と狂犬、希望と亡霊8

「…で?主は?先程なんと申した?」
「ん?だから俺は」
「まずそもそも。主はあの話を真面目に受けておるのか」
「?」
吉継につれられ、人気のない所にきた左近は吉継の言葉にキョトンと首をかしげた。
「さっきも言ったじゃないっすか、断る選択肢はないって」
「…………」
「なら、その期待に応えるしかないでしょう?俺もまだ死にたくはないですし…?」
「まぁその点は同情するがな」
ふむ、と吉継は小さく呟いた。
どうやらこの若者は、本気で三成の指示に従い、本気で武功をあげるつもりでいるらしい。だがその為に知識が足らぬと、恥じることなく訪ねてきた、といった様子だ。
「…」
ー聞きに来たは策のみ。実力ならば十分ということか?
吉継はじろ、と左近を見た。
「俺、三成様に拾ってもらってマジ感謝してるんすよ、だから…」
「そうさな、策をくれてやってもよい」
「マジっすか!」
「ヒヒ、それ故まずは主の実力を測らねばな?」
「へ?」
にたぁ、とした笑みを浮かべた吉継に、左近はポカンとしたように口を開いた後ー

ー勢いよく飛んできた数珠を跳躍して避けた。

「っ!?」
左近は驚いたように吉継の周りで踊るように動く数珠を見た。吉継は右手をあげ、1つの数珠を手に取る。
「初弾をかわしたか。敏捷さはなかなかよな」
「……………」
ふっ、と左近の顔から表情が消える。
左近は少し腰を落とすと、素早く刀を引き抜いて片方を逆手にもって構えた。吉継も左近が構えたのに合わせ、両手をあげた。ぎゃらら、と鈍い音をたてながら数珠が回転する。
「ほう、よい表情をする。まずはかわしてみせ。かわせぬならば使えぬ者よ」
吉継はそう言うと同時に数珠を左近めがけ叩き込むように投げつけた。
ひとつひとつ意思を持ったかのように動く数珠を、ひとつひとつ眼で追う。動体視力的観点からは間に合う速さだ。
足元を攻めたものは跳躍し、胴を攻めたものは弾き、頭を攻めたものは屈む。
「…ふっ」
まずはかわせと吉継はいった。ならばその次があるはずだ。
その次とはなんだ。
「…ふむ、速さは三成に近きそれか。素材としては悪くなさそうさな」
左近は吉継の言葉に、にっ、と笑みを浮かべて見せる。
ーアンタに否定なんかさせねぇよ
その笑みはそう物語っているようだった。
吉継の言葉で左近にも火がついたか、左近は反撃に出た。頭めがけて飛んできた数珠を、二度踏み込んだ後の跳躍からの回し蹴りで打ち返した。
「!」
操る力より左近の脚力が勝ったか、吉継はそれを避ける。左近はその一瞬の吉継の動きを逃さず、一気に間合いを詰めた。
「へっ!」
くるり、と刀を手の内で回転させ、峰の方から斬りかかる。吉継は後退して避けつつ、刀を降り下ろして無防備な左近めがけて数珠を叩き込む。
だが左近もその程度は予想していたか、反対の刀でそれを弾き、体勢を直した。
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