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オカントリオの奇妙な旅路33

「…して、そのふざけた格好はどういうことぞ?」
「ふざけた…?それほど珍妙な格好でございましょうか?」
「気持ち悪いからやめよと言うておる」
「…ならご領主様も俺を大谷と呼び他のお方として扱うのをやめてはくださいませぬか」
自分をしっかりと見据えてそう言う吉継に、元就はふんと笑う。
「ただの農民にしては随分はっきりと物を申すな」
「早くに両親が死にました故、臆していては弟どもを食わせられませぬ」
「ほぅ?口先は大したものよな。……ふふ、よいわ。どこまで貴様が嘘を通せるか、みものよ」
「俺は嘘は申しておりませぬよ」
ばちり、と二人の間に好戦的に火花が散った。吉継は再び、だが心の中で面倒なことになった、と呟いた。
元就はふん、と小さく鼻を鳴らし、茶碗を下に置く。
元就は吉継が三成と別に動いているという言葉を最初から信じていなかった。だが裏切りを最も憎む三成が嘘をつくのもおかしいし、さして嘘をついているようにも見えなかった。そのため、何故吉継がいないのか、珍しく元就には疑問を抱いていたことだった。
なんとなく事態を察し始めたのも、京、堺から戻ってきた三成の様子を見てからだった。元就はす、と目を細めて目の前の子供を見据える。似ているかと問われれば、素顔を見ていない元就には全く分からない。だが、纏う雰囲気、それは吉継のものだった。
「(京のくだらん噂を最大限拡大したくだらん仮説ではあったが…まさか当たっているとはな。まぁこやつは認めぬが…)」
元就は、ふ、と口元に笑みを浮かべる。
「(こやつがいつ、ボロを出すか…多少は楽しませてもらうぞ)」

「(全くいやらしい笑みよな。楽しんでいやる)」
吉継は感情が表に出ないようにするのに大変だった。今までは多少表情が崩れても元々崩れた顔、おまけに包帯で隠されていたから問題なかった。だが今は違う。表情が少しでも動けば相手に分かってしまう。元からこうした駆け引きは得意とはいえ、面倒なことに違いはなかった。
「(これで我とでも言えば奴らしからぬ笑みを浮かべるに決まっておる。俺とは言いにくいものよ)」
「まぁよい。ならば城下の事を話してみよ。我に対する文句でも構わぬが」
「そのような恐れ多い事は…!俺はここより遠く離れた村に住んでいる者でございますゆえ、あまり情勢には詳しくありませぬが」
だがもうやるしかない。吉継は半ば諦めのような気合を入れて、口を開いた。



 その頃佐助はと言うと。
「…何、あんたら」
小十郎と同じように布を噛まされそうになった時、見知らぬ忍に助けられていた。忍により少し離れた河川敷に連れてこられた佐助はそう尋ねる。武器は取り上げられていない。
忍は少し迷う素振りを見せた後、佐助を見た。
「俺は欧州筆頭伊達政宗様に仕える忍だ」
「!!」
「貴様は猿飛佐助だな?小十郎様と思われる子どもを追っていた時、そう貴様の事を呼んだ」
「…………」
佐助はしばらく考え込んだ後、諦めたように頷いた。
「…独眼竜には勘づかれてるみたいだし、あの忍達の事も右目の旦那の事も気になる。否定しない方が吉だね」
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