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オカントリオの奇妙な旅路13

夜。
吉継は一人宿を出て、昼間手にいれた情報屋の元へと向かった。月明かりの中を音をたてずに進む。
「なんやあんちゃん、こんな夜に出歩くのはよくねぇぜ」
最初の情報屋は集団のようだった。路地の隙間でキセルをふかし、にやにやと吉継の事を見ている。
吉継はそんな事は気にもとめずに彼らに歩み寄った。
「主らに聞きたいことがある。何、無論タダでとは言わぬ」
「あぁ?おめーに教えることなんかなにもなーよ、さっさと帰ってお布団かぶって寝てな!」
集団の一人がそう言い、ふーっ、とキセルの煙を吉継の顔めがけて吐き出した。その様に周りの数人がげらげらと笑う。
吉継はふぅ、とため息をついて、す、と片手をあげた。
「馬鹿に構っておる暇はないのよ」
「あぁ?!」
男が吉継の言葉に反応した直後、吉継は相手の腕に自分の腕を絡め、背負い投げの要領で男を投げ飛ばした。
どすん、と鈍い音がして男が落ちる。吉継は自分の行動に色めき立った男たちに向き直ると、懐から数珠をばらしたものを出し、ふわりと浮かせた。
若返ってしまい、普段の数珠を操るほどの力はないが、小さくすれば問題はなかった。
浮かび上がった数珠に驚愕したように後ずさる男たちを、吉継はぎろりと見据えた。
「言ったであろ?暇ではないのよ。痛い目を見るか大人しく仕事をするか、選びや」
「て、てめっ」
「やめろ野郎共」
ビビりながらも色めき立つ男たちに対し、一人がそう声をかけた。その言葉に男たちもしぶしぶと引き下がる。どうやら声をあげたのがリーダー格のようだ。
男はどすん、と路地にあった桶に座った。キセルをくわえたまま、にぃ、と笑う。
「わけぇのになかなか痛ぇ殺気出すじゃねぇか。お前、名前は?」
「生憎と安売り出来る名は持っておらぬのでな」
「ハハッ、いいモン着てるしその雰囲気、御武家様かな?まァいい、金さえ払うんならあんたが誰だかはどうでもいい。で?ご所望のモンは?」
吉継は浮かせていた数珠を手に戻すと、入れていた巾着のなかにそれを入れた。
「最近、ここいらで流行っている香の胡散臭い噂、情報屋を名乗るからには主も知っておろ?」
「おォ、本当に若返っちまったアレの事か。男のあんたからそいつが出てくるとはなァ」
「ほぅ、その噂は真であったか。ならば話は早い」
「?」
リーダーの男は吉継の言葉に眉間を寄せる。吉継は懐から先とは別の巾着を取りだし、上に放りあげ、掴んだ。
ちゃりん、と中で銭のあたる音がする。
「その香はどこから出てきた?」
「…その金、大した額だな。だけど残念ながらその元は知らねぇ」
「チッ、使えぬの」
「て、てめぇ!」
「やーめーろっての。知らねぇのは事実だしな。だが、確証ではねぇか情報があるにはあるぜ。それの一割でどうだ」
男からの提案に、今度は吉継が眉間を寄せる。
「……それは主しか知り得ぬのか?」
「幸か不幸か、この都で一番情報をもってんのはうちの組だ、他を当たってもでやしねぇ情報だぜ。こいつァ俺達の矜持にかけて、保証するぜ」
「…言ってみせ」
吉継は巾着から一つ、銭束を出すと男に放った。
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