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見えないはずの右目が17

 「片倉………小十郎?」
「はっ」
梵天丸は小十郎がやってきた日のことを不意に思い出した。
 あの日、新たな世話役を父上が連れてきた。19…くらいだろうか。今まで来た奴等と違って愛想笑いもない無愛想な男だった。おまけに強面…。それが、小十郎に対する最初の思い。
「そうじゃ。今日よりお前の守役になる」
「………」
興味もない、今まで来た奴等とどうせ同じなのだろう。
そう思ったから、ぷいと梵天丸は顔を反らした。
「…片倉小十郎と申します。以後お見知り置きを」
表情を変えぬまま挨拶をする小十郎に梵天丸もそっけなく
「…梵天丸」
と返した。だが
「存じ上げております」
と返されてしまった。今までされた事のない返答に言葉が詰まった。
「………」
「………」
「(なんか話さないのかこいつはご機嫌麗しゅうだのなんだの。変な奴…)」
梵天丸には父親が小十郎を選んだ理由がイマイチ分からなかった。
とにかく、今までの奴等とはどこか頭が違うのは確かだ、と心の中で呟いた。
「梵、そうつんけんするでない」
「………」
「では頼んだぞ片倉」
「狽ヘ、ははっ」
逃げられた。そう小十郎の顔には書いてあった。
所詮はただの部下なんだな、と梵天丸は少しだけ消沈した。
「…あー……」
「………嫌なら出ていけばいい」
「…はいっ?」
目をうろうろと動かしていた小十郎は驚いたように梵天丸を見た。どうやら梵天丸の考えと小十郎考えていたのは別な事だったらしい。
「…主より止めるよう命を受けたら従いまするが…主から賜った大切な仕事、己が下らない理由で降りる事など滅相もない」
「…今まで来たのは帰ってった」
「小十郎が仕事は梵天丸様の世話でございます。梵天丸様が私めを嫌いであろうとも私は帰りませぬよ」
「…!?」

変な、男。

「…後、最初に申し上げておきますが」
「?」
「正直な所、子供に好まれず子供の世話に手慣れておりませぬ故ご機嫌を損ねる事があると思います。ご了承くださいませ」
「…その顔では子供に好まれぬのは当然だな……」
「煤cは」
軽く衝撃を受けたようだったが顔には出さず静かに頭を下げた。
「本日より、よろしくお願いいたします」
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