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見えないはずの右目が10

小十郎はふぅ、と再びため息をつくと不意にしゃがんで背後の障子を静かに開けた。静かに、といえども素早く、だ。
そこには目を見開いた梵天丸がいた。梵天丸は二人の会話を盗み聞きしていたのだ。
「………」
「………」
「…お前、口調悪いんだな」
怒られるのを恐れる子供のようにジリジリと後ずさる梵天丸のセリフに小十郎は苦笑を浮かべる。
「そんなに気になりましたか?あの者が。それとも私が信用出来ぬと?」
「……両方だ」
素直な梵天丸に小十郎は再び苦笑を浮かべた。
「…あれはお前の家来なのか?」
「そう、なります。申し訳ありません」
「…え?」
謝罪された理由が分からないらしく、目がくりくりと回る。
「ご機嫌を損ねられたのではないかと思いまして。遠慮のない者で、申し訳ありません」
「…ああ…」
そこで梵天丸は先程の会話を思い出したらしい。くしゃ、と音がしそうな程顔を歪めた。
いきなりの変化に小十郎は慌ててしまったが、いきなり梵天丸が小十郎の着物を掴んだのでなんとか落ち着きを取り戻す。
「…お前を慕う人間は沢山いる。なのになぜ、お前は俺の所にいる」
「何をおっしゃいます」
「お前がここにいるのは仕事だからだろう?…、さっさと奴のと「違う!」

パシッ

梵天丸の顔が横にゆれる。
驚いたように見上げる梵天丸に小十郎は自分がした行為に驚く。
梵天丸を、平手で叩いてしまったのだ。
「…申し訳ありません」
「かた…」
「無礼を働きました、申し訳ありません。…ご迷惑なようならば、御館様にご申告願います。小十郎が一存では止められませんし、小十郎に辞める気もありませぬ故」
「…え……」
小十郎は固まってしまった梵天丸を薄目でみた後、頭を下げた。
「…何かあったらお呼びください。小十郎はここにおります」
「…」
梵天丸は何か言いたげに小十郎を見た後、ばっと振り返って走っていってしまった。
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