2009-12-22 19:51
「はぁ………」
今小十郎を見た者はおそらく、体感気温がいくらか下がったことだろう。
見ていて哀れな程小十郎は落ち込んでいたのだ。
何をしているんだ、俺は…
その言葉が小十郎の頭の中で繰り返される。
梵天丸様に手を上げるなど…切腹沙汰になってもおかしくはない。
なんのために梵天丸様の傍にいると覚悟したのだ、この大馬鹿者め。
自身にいらだちを抱えながら静かに座っていた。
夕餉の時刻になり、小十郎は膳を出した後も同じ場所にずっと座っていた。
翌朝。小十郎はそのままの格好で朝を迎えていた。着物から出ている手足は寒さでひび割れていた。
痛い、と思っても自業自得、と思い耐えていた。
「(そろそろ梵天丸様の朝餉の時刻…)」
そんな事をぼんやりと考えていると
「……片倉」
とても小さな声が不意に後ろから聞こえた。それは梵天丸の声。
小十郎は驚いて振り返った。そんな小十郎を見て、まだ寝癖の残る梵天丸は顔を真っ赤にさせながら、
「…ご、ごめんなさい」
と言った。
その言葉に小十郎は固まってしまう。
「…、は、はい?何故梵天丸様が謝られる…?」
「………」
疑問符を浮かべる小十郎に梵天丸は何も言わない。下を向いて言おうか言うまいか、迷っている。
「…………」
ぼそぼそと小さい声で呟く。聞こえなかった小十郎は少し身を屈めた。
「なんで…」
小十郎の言葉が途切れる。突如梵天丸が小十郎に抱きついたのだ。
「ぼっ、梵天丸様…!?」
「そばにいて」
泣きそうな声が、耳元で聞こえた。
「嫌いに、ならないで。ごめんなさい…ッ」
梵天丸の言葉に小十郎は目を見開いた。そして。
「…小十郎は梵天丸様が好きでございます。傍にいて欲しいと望まれるなら、小十郎めはずっと傍におります」
小十郎は喜びで涙が出そうになるのを耐えながら、だが震える声でそう言った。