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見えないはずの右目が12

「…お前体冷たい……」
「!も、申し訳ありません」
「お前…ずっと外にいたのか…?」
慌てて離れた小十郎のひび割れた手を見て梵天丸は呟く。
「…自室に戻るわけにもいきませぬ故」
「…お前はやっぱり変だ」
「外にいると申しましたからには違えるわけにはまいりませぬ」
真面目にそう返すと、変じゃなくて馬鹿だな、と言われてしまった。
「…おっと。そろそろ朝餉の時刻になりまするな。用意させて来ます」
「お前はいつもどこで食べてるんだ?」
「は?…厨房の方でささっと」

「…一緒に食べないか?」

さらりと出された提案に面食らう小十郎。
「…は?」
「……っ!一緒に食え!」
二度言うことがとても恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にさせて怒鳴ってきた。小十郎はしばらく呆然としていたが笑みを浮かべ頷いた。
「分かりました。支度をしておきます。まだ早い、もうしばしお休みくだされ」
小十郎は痛む足を庇いながら立ち上がる。梵天丸は目を擦り小さく頷くと部屋の中へと戻っていった。
 朝食の支度をいいつけ厨房を出ると、昨日やってきた部下が木刀を片手に走りよってきた。
「小十郎様ァー朝稽古始まるっすよー」
「…そういや行くっつったんだったか…」
「?小十郎様、手足酷い事になってるっすよ」
ぺしぺしと遠慮なく手を叩く部下に一つため息をついた後、
「分かってる。とっとと道場行くぞ」
「へい!」
梵天丸が再び目を覚ますまでの間に、小十郎は道場へ向かった。
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