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見えないはずの右目が6

部屋に入るととたんに体が暖まっていくのを感じた。梵天丸は小十郎に背を向けて、膝を抱えて座っていた。
「失礼いたします」
声をかけても返事がなかったが、小十郎は障子から少しだけ離れた位置に座った。
「梵天丸様は何がお好きでございますか?」
「…すき?」
「食べ物や、動物など」
「…好きなものはない。でも……俺は鳥になりたい」
ぼそりと言われた言葉に目を見開いた。

ここから逃げ出したいと、言うことなのか
そこまで追い詰められて、いたのだろうか。

「…鳥になれたらどこに行きたいのでございますか?」
「……ここじゃない、雪が降らないという地を見てみたい」
梵天丸はようやく振り返り、少しだけ淋しそうに言った。

「雪で閉ざされたこの国を出ていきたい。雪で閉ざされていない、もっと苦しくない地に行きたい…」
そういう梵天丸から小十郎は目が離せなかった。
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