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もうお前を離さない120

―エピローグ―

「れ、いなが…消えた…。幸村さんも…」
「いつの日かまたっ、て…アホかアイツは…。…確かに、また会えればいいけどよ…真田幸村……」
他の警察や野次馬より早く現状を理解した2人は薄く靄の立ち込める、幸村達がいた所を見た。
その靄の中で、ぐらりと影がゆれた。
「!明智さん!」
伊達は咄嗟に走りだし、倒れる明智を途中で抱き止めた。
さらに血色の悪くなった明智の手からは、血が出ている。
「あ、あ、明智さんがもう紙粘土みたいになっちゃってますけど!」
「伊達の…若頭……」
「…顔色が、だよな?俺に任せろ。村越、お前もついてこい、残ると面倒だぞ」
「あ、はい!」
伊達は明智を抱えあげると駆け出した。村越もそれに続く。
ガヤガヤと騒がしくなった現場を早々に抜けると、目の前に車が止まった。
「龍也様、」
「小十郎!早かったな!」
「一回白バイに追い掛けられ、撒いてきましたので」
「まっ?!白バイって時速200キロとか出るのに?!」
「ナンバープレートでばれるぞ」
「白バイに追い掛けられる前はちゃんと止まりました。言い負かす自信はあります」
「…流石片倉君ですね」
「だ、大丈夫なんですか?!」
早く早くと急かされながら車に乗り、明智を座席に横たえるのを手伝いながら村越はおろおろと言う。伊達はドアを閉じながら苦笑した。
「流石小十郎だな…。よし、少しここから離れてからやるぞ」
「な、何をするんです?」
「伊達の若頭……あんまり揺らさないでください………」
「大丈夫か、明智さん」
「私が心配されるとは…世も末ですね……」
「ざけんなこの野郎俺が変人みてぇじゃねぇか」
「なんでそうなるんです…」
伊達は予め用意していたのか、手早く明智の手に包帯を巻いていく。明智は片方の手で額をおおっていた。
「若頭……いいですよ…。もう…意識が飛びそうなので……」
「…明智さん。アンタ、ウチの組が本当に血液検査すると思ったのか?」
「…?」
「ありゃ嘘だ」
「…な、なんでそんな事したんです…か?」
明智は珍しく驚いた表情を浮かべている。伊達は不思議そうな村越にニヤリとした笑みを浮かべながら、座席の下から何かを取り出した。
「こうする為な」
「…!」
明智と村越は同時に目を見開いた。
「ゆ、輸血パック?!」
「ほら、明智さん左腕寄越せ。つか、服脱げ」
「…。輸血用の血を採るために採血していたんですか…?」
体を起こされ、大人しく伊達に手伝われながら服を脱ぐ明智。伊達は手際よく輸血の用意をしながら頷いた。
「真田が心配していたしな。血がいる事は真田から聞いた。さらにそこからアンタの血液は普通じゃない、だったらアンタ自身の血を採っておくしかすべはねぇだろ」
「……………」
「なんだよその顔は。不服かよ?」
「いえ別に。…しかし、どうしてそこまで…?」
「アンタと俺は同盟仲間だろ」
「まだ違いますよ」
「うるせぇ細かい所に突っ込むなこの野郎。少なくとも俺はアンタを信用すると決めた。仲間となる事を決めた。なら、助けるっつー選択肢しか、俺の中にはない」
「…!」
「理由がそれじゃ、ダメかよ?」
「………若頭…」
「…。あ、明智さん?…泣いてんのか?」
「気のせいですよ」
「否定が早いぜ明智さん。…それに、葵組の借りもあるからな!そーゆう事だ!」
「…ふふふ…。…そういう、事にしておきますよ」
どこか嬉しそうな明智の声に、伊達は小さくはにかんだ。



――その後。
幸村と宮野の逃走劇はニュースにならず、機動隊が動かされた事も全く記事にもされなかった。
「宮野もう行っちまったのかー…」
「寂しくなるね…」
「…でも、少し安心した気もする」
「…それもそうだな」
村越達はそんな会話を交わす。
「よぅ明智さん。もう大丈夫か?」
「えぇ、お陰様で」
「そりゃよかった。…さて、始めるか」
「そうですね」
伊達と明智は同盟を結ぶ。
それぞれがそれぞれの時間を再び歩み始める。

世界を変える為に、己の世界を捨てたもの。多くを知り葛藤を抱え、しかし覚悟を持ち己の世界に、帰ったもの。

その両者が彼らに与えた物は、いかほどのものだったのだろうか。

「…真田幸村」
「……、黎凪」


そして彼らを待つものとは――――――



―――前編 終
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