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もうお前を離さない109

「では、お気をつけて」
「お前もな。…また後で」
伊達と片倉に別れを告げ、幸村は階段に足をかけた。
月明かりが不気味に階段を照らす。幸村は階段の踊り場で少しだけ月を見上げた後、呼び出された場所へ向かった。
階段を上がりきり、そちらを見る。そこには

何故かおびただしい量の団子があった。

「…な……なんでござるかこれは…ッ!…はっ!いかん!」
団子に手を伸ばしかけて、はっ、と幸村は止まる。
―…気を付けて、幸村
宮野の顔が過った。魅力的な団子だが、あからさまな罠だということは落ち着けば分かる。
「……。如何したものか」
幸村はどうするべきか迷った後、団子の先にある人の気配の元へ行くことにした。

 「よぉ、葵組の。この前は世話になったな」
「今回は片倉君を連れてきたのかい?」
「……」
「無視することはないじゃないかね片倉君ッ」
同じ頃呼び出し場所に到着した伊達と片倉は、葵組頭領の最上起光(こう書いてサイジョウタツアキと読む)と顔をあわせていた。
伊達は大袈裟に肩を竦める。
「アンタがそこまでの節操無しだとは思ってなかったもんでね。それにあの日、道場を放っておくわけにもいかなかったからな」
「一言多いのではないのかね!私は節操無しではないのだがね!」
「ねーねーうるせぇーなぁ…アンタは名前も話し方もさながら戦国BASARAの羽州の狐だな…」
「相変わらず失礼だね!私の名前はサイジョウなのだよ!漢字が同じだとはいえ、最上義光などと一緒にしないでほしいのだがね!」
「なんだ、アンタ知ってんのか。…いい年してアクションゲームとはなぁ?」
「少し黙らないかねっ!」
きゃんきゃん喚く最上に、伊達はあからさまにため息をついた。そして、ギッ、と睨む。
「で?俺に何のようだ?前回の事で文句があるっつーならこちらにもある。俺を捕まえるためか知らねぇが一般人に手ぇ出しやがって…」
「一般人?それは違うのではないかね?…帰ってきた部下達は確かに、炎を纏った姿を見た、と言ったのだがね」
「…!」
伊達は最上の意図が何となく分かり舌打ちした。最上の目は意地悪く細められている。
「オマケに名は“真田”“幸村”。…私が羽州の狐に似ているように、彼も非常に紅蓮の鬼に似ている気がするのだがね?」
「…ッ「だから何だと言うんだ?」
ずい、と言葉に詰まった伊達の前に片倉が出る。前に出たのは、切羽詰まった伊達の表情を見せないためだろう。
片倉は静かに木刀を右腰に添えるように持った。
「話の腰を折らないでくれるかねっ!私は伊達君と話しているのだよ!」
「話の腰を折ったつもりはねぇが?真田幸村?その名がなんだ。最近じゃ戦国時代ブームでそんな名前をつける親がいてもおかしくはねぇだろう。炎を見た、なんざ、勝手にパニックに陥ったそちらさんの妄想なんじゃねぇのか?」
「ぐぅ。意外と口も回るのだね片倉君ッ!」
「生憎、こちとら副業が教師なもんでな。テメェのような野郎は慣れている」
「小十郎…」
伊達は目の前の片倉を見上げた。片倉は振り返らないが、その背中に伊達は酷く安堵した。
「…しかしだね片倉君。残念ながら私には妄想で片付けられないのだよ。何せ、怪我人が出てしまったからね」
「なら、貴様等が龍也様に持った薬についてはどう言い逃れするつもりだ?…媚薬とはまた、随分ふざけた物を龍也様の御身に入れてくれるじゃねぇか、あぁ?」
片倉は静かに腰の木刀に左手を添えた。
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