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賽と狂犬、希望と亡霊22

またしばらく拮抗が続く。
勝家の攻撃は先程より鋭く重い。だが左近は強くなった攻撃を先程までと同じように凌ぎきる。
勝家が殺る気を出したところで、左近もまた本気を出しただけに過ぎなかったというところだろうか。
ぎん、ぎん、と鉄がぶつかる音がする。
「…っと!」
左近はひときわ強く勝家を弾く。せめぎあいで少し体勢が悪くなっていたためだ。仕切り直しをするために一度離れる。
勝家はそれを許さんと言わんばかりに踏み込んできた。勝家にとってはこのまま体勢を崩した方が都合がいい。
左近はそれを予想していた。
「!」
勝家が振り抜いた逆刃薙をすんでで交わし、体勢が直りきる前に左近から踏み込む。不格好ではあったが、勝家の間合い内に踏み込めた。
「はーっ!」
左近は不格好な姿勢から無理に刀を振りかぶり、勝家の膝目掛けて斬りつける。足は白兵戦では何よりの資本だからだ。
「……くっ…!」
勝家はとっさに狙われた足を振り上げた。膝より下、脹ら脛には防具がある。そこで左近の攻撃を受けたのだ。
左近も無理な姿勢からの攻撃であったが為に威力は弱く、骨を折るほどの威力はなかった。その攻撃は勝家をよろめかせ、後退させるに留まった。
「くそっ、」
「ぐっ、」
勝家は中途半端なところで横殴りに殴られたことで、たたらを踏んで左近から距離をとる。左近も勢いを殺しきれず、ごろごろと転がって体勢を直す。
「………」
勝家はいまいましげに左近を見つめた。思ったように戦えないことに苛立ちを覚えているのだろうか。
一方の左近は楽しげだ。この二人の戦いに対する態度は、その内大きな差になってくるであろうことは簡単に予想できた。
「…一つ尋ねるが」
「一つといわずにどーぞ」
「噂話を聞いて、といったな。何故それで私に会うことを望んだ…?」
「…それを言っちゃあ面白くないっしょ。それに俺はまだ、アンタのことをよく知らねーからさ。まだそれは内緒さ」
「……そう長くお前に付き合う気はない…!」
勝家はそう言うなり勢いよく地面を蹴った。
左近もそれに応えるべく同様に地面を蹴った。
お互い体当たりのようにぶつかり合う。ぎちぎちと互いの武器が悲鳴をあげる。
勝家は黙したまま、左近は楽しげに笑ったまま、近距離で互いに互いを見やる。
お互いの考えを探るように。お互いの思惑を潰すように。
「勝家ぇ!!何をしておるかァ!!」
「「!」」
だが、二人の戦いは思わぬところで終わりを迎えることになる。
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