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賽と狂犬、希望と亡霊17

「っひょー!もう戦闘始まってるとか、伊達の動き速いっすね!」
「感心している場合ではないぞ左近。ほれ、三成が行く」
「あぁっ!!待ってくださいよ三成様!」
三成率いる隊が賤ヶ岳に到着した時、すでに伊達と織田の戦いは佳境に差し掛かっていた。
三成は小さく舌打ちした後、目立たぬように下げさせていた旗を一斉に上げさせ、それまでの歩みを止めるどころか速める勢いでその戦闘に乱入していった。左近は慌ててその三成に続く。正直ここまでの道程で多少の疲れが出ていたのだが、大将である三成を一人で行かせるわけにもいかない。それに、いざ戦闘を目の前にしたら、あっという間に血が滾るのが感じられたものだから、疲れなどあっという間に吹っ飛んでいた。
「島左近、入りますッ!」
左近はそう名乗りをあげると、乗っていた馬から勢いよく飛び上がった。そのまま着地すると、馬を放置して三成を追うように駆け出す。
「…そういや、この隊って…」
左近は目の前の織田兵を斬り捨てたとき、不意に伝えられていた織田の隊の情報を思い出した。伊達討伐がメインであったものだから、すっかり忘れていたが、確かこの隊には、柴田勝家がいたはずだ。

柴田勝家は左近が浪人時代に気にしていた男だった。彼には、どこか自分と似たものを感じていた。
だから一度会ってみたいと願っていた。
三成に出会い、今はかつてとは違う。かつてのような想いはない。
だが、変わったからこそ、変わった今の自分も、また彼に会ってみたいと思っていた。
「…まだ死んでんじゃねぇぞ…!」
左近はそう言って、勝家の姿を探すべく地面を蹴った。



 「…あまり貴方に時間をかけていられないようだ」
「!」
豊臣乱入の知らせにしばらく動きを止めていた二人だったが、勝家のその言葉に政宗は刀を構え直した。勝家は腰の位置で真横に逆刃薙を構えている。
「Ha!お前程度が俺に決着をつけようってか?」
「貴方もあまり奢り昂らぬ事だ…貴方には微塵の興味もないが、誤った道を進む者だ……せめてもの忠告として伝えておこう」
「…生憎だが、俺は間違った道なんざ進んじゃいねぇよ。ありがた迷惑ってな!」
政宗は勝家の、見下したような憐れんだような言葉に小さく舌打ちをし、勢いよく地面を蹴った。
勝家に到達する直前でぐるりと回転し、勢いをつけて斬りかかる。勝家はそれを前面の刃を振り上げて弾き、そのまま手の内で逆刃薙を回転させて政宗の胴を狙った。政宗はそれを反対の刀で横から叩きつけるようにして防ぎ、同時に勝家の斜め前に着地した。
その着地の勢いを殺さぬように再び回転するように、ステップを踏み、横ぶりに斬りかかる。勝家はそれを屈んで交わし、政宗の膝めがけて構え直していた逆刃薙を突き出した。
「かかったな」
「!」
政宗は踏み込むと同時にその逆刃薙を思い切り踏みつけ、地面に叩きつけた。政宗の体重で、引き抜くことができない。
政宗はがら空きになった勝家の身体目掛けて刀を突き出した。
「ーーッ」
勝家は、ふっ、と息を止めると、勢いよく逆刃薙を横へ払った。
「!」
そう来ると予想してなかった政宗はその行動で前身のバランスを崩し、攻撃は勝家を外れた。
勝家はそのまま逆刃薙を引き抜き、だが間合いが近すぎたために跳躍して距離を取った。
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