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賽と狂犬、希望と亡霊16

「…」
勝家は政宗の装備に目を細めた。
流石に片手で三振り、合計六振りもの刀を扱う武士と戦ったことはない。そもそもそんな風に普通は持てない。指の間に挟んで刀を振るなど、常軌を逸している。
だが目の前に立つ男は、それだけイレギュラーなことをしておきながら、平気な顔で立っている。立っているどころか、軽々とその刀を振り回している。
「Ah?さっきまでの勢いはどうした、新入り」
そう言って政宗は、にやりと笑って見せた。どうやら随分その装備に慣れているらしい。無謀だと侮ることは出来ないだろう。
「……………」
勝家は黙ったまま逆刃薙を下段に構え、今度は自分から先に打って出た。
「!」
政宗は意外そうに勝家を見たが、すぐに楽しそうに笑って、それを迎え撃つように地面を蹴った。
がぃん、と刃が鈍い音を立てる。
勝家の逆刃薙は幅広の刃だから、政宗の三振りの刀も余裕で受けることができた。
「…!」
勝家はその政宗の攻撃が、先までの攻撃と全く重さが同じであることに少しばかり驚いた。
「…貴方は、何故信長様に歯向かうのだ…?」
なるほど政宗はやはりそれなりに強いらしい、と判断した勝家は、気が付けばそう政宗に尋ねていた。政宗はようやく口を開いた勝家の問いに、にや、と笑って見せた。

その勝ち気な笑みが。負けるはずがないとでも言いたげなその笑みが。

何故か無性に、癇に障った。

「当然だろ?あんな野郎に天下を任せてられっか。魔王のオッサンを倒して、俺が天下を獲る」
「………野心など、抱かぬに越したことはない……。貴方がそれを抱くのであれば、私は心より蔑もう」
「…………Ha…そんなふざけた目をしてる理由はそれかよ」
政宗は勝家の言葉に一瞬目を見開いた後すぐに苛立たしげに眉間を寄せ、そう吐き捨てるように言った。
その言葉は政宗のスイッチを入れたのか、政宗は先程までの楽しんでいた様子を消し、勢いよく勝家を弾いた。
「…ッ」
あまりの勢いのよさに勝家の体が軽く飛ぶ。あまり勝家も余裕に構えてはいられなさそうだ。
「…無駄なことなのだから」
勝家は一人ごちるようにそう言い、突っ込んでくる政宗を返り討つべく逆刃薙を構えた。


しばらく二人の拮抗は続いた。
政宗は勝家よりパワーの面では勝っていたが、素早さと正確さにおいては勝家が勝っていた。政宗の方が攻勢ではあったが、勝家は全ての攻撃を正確に受けており、ダメージにならなかった。
政宗は内心舌打ちをする。
ーなんでこれだけの力を持ってる野郎が、こんな下っ端にいやがる……?
がん、と何度目になるかに分からない衝突で、再び二人は離れた。
政宗はふぅ、と息を吐き出したが、勝家に息を切らしている様子はなかった。
ー面白くねぇ
政宗がそう思い、一気に勝負に出ようとした時ーー

「筆頭!!!豊臣っす!!!」

「「!」」
二人は伊達軍の伝令の言葉に、ほぼ同時に西へ視線をやった。
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