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オカントリオの奇妙な旅路5

 それぞれの場所でそれぞれ騒ぎがあった翌日、三人は京都に辿り着いた。京の都は祭が近いのか、わいわいと戦が近いとは思えない賑やかさだった。
「やれ、呑気なことよな…」
「あー、俺様あれ食いたーい」
「ガキかテメェは!」
吉継は呆れたような妬ましそうな声で小さく呟き、二人がついてきていないのに気がつかないままさっさと歩みを進めた。
佐助はへらっと笑みを浮かべ両手をあげる。
「子供ですけど?推定年齢俺様8つくらいですけど?右目の旦那も10くらいですけどー?」
「てんめ…ッ!」
「アンタ達、ここいらじゃあ見ない顔だねぇ。遠くから来たのかい?」
小十郎と佐助がぎゃいぎゃい騒いでいるところへ、近くで祭の用意をしていた女が声をかけた。
ぴた、と小十郎と佐助は言い争いをやめる。相当若返っているために自分達が何者であるか知り合いがいたとしても気付かれることはないだろうが、この状況で下手に騒ぎを起こすのも得策ではない。
「…えーっと…」
「アンタ達、親はどうしたんだい。その年で子供たちだけッてのはおかしな話だ。……あ、まさか迷子かい?だったら今ちょうどあっちに…」
次々と捲し立てる女の勢いに二人が目を丸くしてしまっている所へ、事態に気がついた吉継が戻ってきた。
ぽかんとしている二人の後ろに回り、がし、とそれぞれの肩を掴む。
「あいすまぬ、ちと目を離した隙にちょこまかといなくなってしまってなァ、探しておった」
「ん?あんたぁ、この子達の知り合いかい?」
「同じ寺の兄弟子といったところよ。この二人は入ったばかりでなァ、和尚殿が祭りがあるから連れ出してやれと」
「「(よくもまぁぺらぺらと!)」」
さらっと適当なことを並べる吉継に、半ば感嘆しながら小十郎と佐助は思わず互いを見やる。女は吉継の言葉に納得したようで、そうかい頑張るんだよ、と小十郎と佐助にあめ玉を握らせ、準備に戻っていった。
女が視界から消えた所で、吉継は手を離しくすくすと笑った。
「ヒヒッ、よかったなァ」
「…大谷の旦那の饒舌はその頃から健在?」
「…何はともあれ助かった、だがあの女の口ぶり…ひょっとしたらここ…」
「あれー?君たち…見ない顔だねぇ!」
小十郎は女の口ぶりから嫌な予感がしていて、それを言おうとした時被せるように陽気な声がした。
三人してそちらを見やれば、派手な男が一人。吉継はにこ、と人の良さそうな笑みを作った。
「少し離れた寺の者よ。主は?」
「俺は前田慶次!こいつは猿の夢吉。祭に遊びに来たのかい?」
派手な男の名前は前田慶次。前田利家の甥に当たる男で、一時期西軍に属していたが抜け、その後の消息は分かっていなかった。
吉継は口元に笑みを浮かべたまま、笑っていない目で慶次を見据えた。佐助は我関せずといったように視線をそらす。小十郎も話には聞いていたので、いざという時のために懐に忍ばせた刀にそっと手を添えた。
「まぁ…それだけではないがの」
「ははっ、そうかい!なら案内してやろうか?この祭は、」
「生憎だが遠慮しておく。そう暇でもないのよ」
吉継は慶次の申し出をぴしゃりと断った。
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