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オカントリオの奇妙な旅路3

「だが確かにこの成りじゃあ政宗様に顔向けもできねえ…支障だらけだ」
「でしょ?俺様もこーんな若い時だとろくに術も使えないし。ど?右目の旦那も、俺様達と一緒に、原因探しに行かない?」
「テメェ等と、だと?」
「ヒヒッ、警戒するのも無理はないわなァ。見知った武田の忍と一対一ならまだしも」
「………」
小十郎はぴくりと眉を揺らし、じろ、と吉継をにらんだ。吉継はにやにやと口元で笑うだけで、その真意が知れない。
吉継は大仰に肩をすくめた。
「とはいえ戦までそう長く時があるわけでもなし、早に解決せねばならぬ問題よ。一人では厳しかろ?」
「よく言うぜ…てめぇはこんな状況になったのが西軍だけっつー状況にしたくねぇだけだろ?」
「ヒヒヒッ、嘘で固めてそちらに知れぬようにすることなどいくらでも可能よ」
「じゃあなんでわざわざご足労願ってこんなトコまで来たんだ?」
「はいはーいお二人さん!喧嘩はよそでやってってね。で、右手の旦那はどーすんの、来るの、来ないの。別に来ないなら来ないでいーけど、俺様一応アンタとは敵だからね。手助けはしないよ」
佐助は呆れたようにぱんと手を叩き、億劫そうにそう言うと小十郎に向き直った。小十郎はう、と詰まって考え込む。
今の姿を主君に見られるわけにはいかない。そして一人で原因を探るには、今の子どもの姿では限界がある。吉継や佐助が何故わざわざこちらにも来たのかの真意は掴めないが、近づく戦の事を考えれば、贅沢は言っていられない。
「…行く」
佐助は小十郎の言葉ににへっ、と笑いぽんと手を叩いた。
「よし、決まり!じゃあさっさと用意してきて!俺様たち旦那の畑で待ってっから」
「やれやれ、また塀を越えるのは億劫よなァ」
「飛べない大谷の旦那はただの人ってね、ぶふっ」
「……呪詛はいくつかは使えるのでなァ…その顔伝説の忍のようにしてやろか?」
「それは勘弁!!てかアンタ俺様並みに身軽のくせに!」
「ヒッヒッヒッ」
「…なにやってんだか……」
小十郎は漫才のようなやりとりを繰り返す二人に若干呆れながら、一先ず政宗の部屋へと向かった。
静かに障子を開け、中の様子をうかがう。政宗は普段通りの姿で静かに寝息をたてていた。小十郎はほっ、と息をつく。
「……少しの間、離れることをお許しくださいませ、政宗様」
小十郎は小さくそう呟くと障子を閉め、足早に自分の部屋へと向かった。

 「あ、来た来た」
「あっ、テメェ等人の畑のもん勝手に食ってんじゃねぇぞ!!」
「瑞々しい野菜よな、ついつい旨そうでなァ」
「ふぬぐっ……」
「野菜のこととなると弱いな右目の旦那…」
吉継はぽいと残っていた胡瓜を口に放り込み、座っていた石から腰を上げた。佐助もぺっと茄子のへたを吐き出す。
「原因探しは結構だが、心当たりもねぇのにどこを調べるつもりだ?」
「まずは情報を集めねばなァ。こうしたことは京の都が一番簡単であろ」
「……ていうか俺様、正直これが人為的な事なのだとしたら、一人しか思い付かないんだけど」
「……確かにな………」
佐助と小十郎の脳裏にとある人物が過ったが、確証もないので名前を出すのはやめておくことにした。
「これが人為的な事件なのかそれとも自然現象なのか、それもまずは確かめねばなるまい?ほれ、早に行くぞ」
「京都で見つかんなかったらどうするよ?」
「ヒヒッ、主らしからぬことを言う。見つければよいのよ」
「…お前、こんな状況なのにやけに前向きだな……」
こうして三人の奇妙な旅が始まった。
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