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もうお前を離さない2

幸村が食事をしている間、宮野は幸村が見たことのない物をせかせかと使いながら部屋をうろついていた。食べおわった後に机の上を見ると、やはり見たことのない文字のようなものが羅列した紙があった。
「真田幸村。取り敢えずー…今最低限聞いておきたいことはある?私はそろそろ出掛けなきゃいけないんだ」
「え?あ、はぁ…。…取り敢えず、ここはどこでござるか?」
「ここは貴方のいた世界の外の世界、とでも言おうかな。そして、貴方のいた世界から単純に400年後の世界」
「なんと!」
「ちょっ、静かに!ここはアパートって言って、隣の家との境の壁が薄い部屋だから、大きな声出さないで!」
「!もっ申し訳ござらぬ。しかし…ここが家、でござるのか」
「私はお金ないからね。アパートっていう小さい家の塊みたいな所しか住めないの。住める場所があるだけマシなんだよー」
宮野はクスクスと笑いながら語る。幸村はその笑顔に若干の違和感を覚えながらも、なんとか現状を把握しようとまわりの悪い頭を働かせた。
「つまり、この世界に某のような者はおらぬ、と?」
「幸村はゲームの中の人だからね…殊更いない」
「げぇむ?」
「なんて説明しようかな…遊戯の一つ?かな。幸村は戦国BASARA、っていう、私達の世界の歴史上存在する時代の戦国時代という時期に生きた武将達を元に作られた、ちゃんばらみたいな物に登場するの」
「はぁ…」
「実物があればいいんだけど…ごめんなさい」
「い、いえ!謝らないでくだされ!」
「…簡単に言っちゃうと、槍から炎を出せる人はいないの。握力で人殺せる人も、地面に潜れる人もいない。そもそもこの世界には戦も武将もない。だから、武器をとる人はいない」
「そ、そうなのでござるか!」
幸村は宮野の言葉を漸く理解できたような気がした。
要はこの世界は自分がいた世界とは全く違う世界であり、戦のない平和な世であるらしい、ということ。そして、自分のような人間はいない、ということを。
「…あ、やばい出なきゃ。申し訳ないんだけど幸村。私はこれからこの世界の学問所に行かなきゃならない。だから、この家から一歩も出ずに、ここで待っていてくれる?」
「?分かり申した…あ、廁はどこに?」
「…あー…廁ね…。よし、これは実物あるからちょっと来て」

そして幸村がトイレというものを使えるようになるまでに1時間かかってしまったとか。

「酷い言い方だけど幸村。貴方はこの世界では異端な存在。…この家から、何があっても出ないで」
「分かり申した。それにしても…何から何まで申し訳ございませぬ」
「気にしない気にしない。あと、敬語は使わなくていい。じゃあ、行ってきます」
「!お気をつけて!」
幸村はまだ暗い中に出ていった宮野を少し見送ってからアパートなる家の中を再び見渡した。
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