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もうお前を離さない1

幸村が目を覚ました時、そこには見知らぬ風景があった。
「…む?」
幸村は頭をひねりながら起き上がった。
狭い部屋に幸村は寝かされていた。だがその部屋にあるものは見たことのないものばかりだった。キョロキョロと様子を伺っていると、不意に扉が勢い良くあけられた。
「ぬぉっ?!」
「あ、起きた」
入ってきたのは恐らく幸村と同じくらいの年であろう少女だった。その身に纏う服も、和服ではない。
この者はただ者ではない――そう思い咄嗟に槍を掴もうと手を伸ばしたが、そこには何もない。仕方ないので取り敢えず幸村はその少女の素性を探ることにした。
「某、真田源二郎幸村と申す者!貴殿はどなたでござろうか?」
「私?私は宮野黎凪。貴方にとっては初めましてかなー」
「…某にとっては?」

「私は貴方のこと知ってるよ、真田の大将?」

 【もうお前を離さない】

「ななっ何故?!貴殿は信州もしくは甲斐の方でござるか?!」
「いや、私は東京生まれの東京育ち」
「と…?」
「あ、ごめん間違えた。幸村の世界では江戸の出だよ」
「江戸?!…して、某の世界では、とは一体…?ここはどこでござるか?」
幸村がそう問うと、宮野は少し迷う素振りを見せながら幸村の前に座った。手には本が握られている。
「…真田幸村。私が何をいっても大声を出さないでね。今真夜中だから」
「…?分かり申した」
そう念を押され、幸村はよく分からないまま承諾した。宮野は幸村の言葉を聞くと、手のなかの本を差しだした。
「こ、これは政宗殿にそっくりな…」
「伊達政宗その人だよ、その絵は」
「はっ?!」
「中を開けてみて」
「?」
促されて幸村は本を捲る。そして、目を見開いた。
「これは…!御館様が倒れる前の出来事でござる!」

「その本の通り、真田幸村。あなたの世界は、私の世界では物語に過ぎないんだ」

宮野の言葉に、幸村は目を限界まで見開き、ぽとりと本を取り落とした。どうやら衝撃のあまり、声は出ないらしい。
幸村はしばらくそのまま固まったあと、ぎこちない動きで宮野を見た。
「…どうやったら帰れるのでござろうか」
「解らない。私もバイト終わって帰ってきて、その帰り道に貴方拾っただけだから、いつから貴方が居たのかも知らない」
「そ、そうでござるか…かたじけのうござる」
幸村の言葉に宮野はすまなさそうに玉を軽く下げ、どこにおいてあったのか盆を取り出した。
「きつねうどん。作ったんだけど食べる?」
「はっ?」
「いや、お腹すいてないかと思って。それに怪我もしてたし?」
そう宮野に指摘されて初めて、幸村は自分の体が手当てされていることに気が付いた。
幸村はありがとうございまする、と呟いて盆を受け取った。
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