もうお前を離さない364

しばらく2人はそこで飲みあっていたが、騒がしくなった坂の上の様子が気になり、戻る事にした。
「Gooo tooo Heeeeell!!」
「?!ど、独眼竜?!」
「ぎゃぁぁあぁぁぁぁ!!ぼ、僕は関係ないでしょぉぉぉぉっ?!」
「Shut up!」
「な、なんだってんだ?!」
「お、落ち着け独眼竜ー!!」
何故か伊達が小早川向けて刀を振り上げていた。
徳川はそんな伊達を後ろから抱きついて止める。普段諫める片倉はどうした、と振り返ると、頭を抱えてうなだれていた。
毛利と大谷は肩を震わせて静かに笑っており、石田はどこか真剣に考え込んでいて伊達を止めようとすらしていなかった。
「な、な、な、なんなんだ?!」
「独眼竜、あくまでも私の世界の話ですからね?そんでもって、実際付き合ってたのは貴方ですからね?」
「だぁぁぁぁぁッ何やってんだアンタの世界の俺はァァァッ!!」
「!宮野殿、これは何の騒ぎなんだ?!」
徳川は刀を地面に突き立て、片倉と同じように頭を抱えた伊達と、困ったように眉間を寄せ、顔に手を当てている真田の隣で平然としている宮野とを交互に見た。
宮野は村越と顔を見合せて小さく笑う。
「いやー、大将になった毛利から何かしろ、と言われたので私の世界の小早川殿の話をしたんですよ」
「…なんで独眼竜が怒るんだ?」
「聞かせましょうか?」
「No!!もう聞きたくねぇ。いや、また聞いたら小十郎が再起不能になる!!」
「そんな話なのか?!」
「カラオケ行った後言ってた奴だよね。いやー流石にショックは大きいみたいだね…関係ないのに」
「一体何なんだ?!おい、毛利!笑ってんじゃねぇ!」
長曾我部は伊達を横目に見ながらようやく笑いが収まったらしい毛利に詰め寄った。
毛利はどこか長曾我部を馬鹿にしたような笑みと共に見上げた。
「…ふん。貴様は聞けば確実に笑うぞ、長曾我部よ」
「何だと?」
「どうやら奴の世界の金吾は女子ではなく男子が好色であったようでなァ」
「………え?」
「竜の右目の嫡子を追い掛け回しておったそうだ」
「な?!」
思わず長曾我部は口元に手を添えた。
「黙れ黙れ!!あくまで宮野の世界の話だ!」
「と、いいつつ一番気にしておるのは主らではないか」
「〜〜〜〜!宮野!そいつはちゃんと婚約すんだろうな?!」
漸く顔を上げた片倉はそう宮野に問うた。
「ん?あぁ、真田幸村…正しくは真田信繁っていうんだけど、まぁとにかく幸村の娘阿梅と」
「それがし?!」
「ちなみに真田信繁のお嫁さんは大谷吉継の娘ね」
「?!」
「そんでもって真田信繁の親父さん、真田昌幸のお嫁さんは、石田三成のお嫁さんと姉妹だったそうな」
「えぇぇ?!三成のと?!」
「いやー血縁関係は面白いですよ?真田信繁の兄真田信之のお嫁さんは本多忠勝の娘だし、伊達政宗の娘の五郎八姫は徳川家康の息子と結婚する」
「忠勝ぅ?!」
「言っときますけど、ここは本ッ当に反映されてませんからね?そもそも小早川秀秋は豊臣秀吉の養子だし、石田三成と直江兼継は義兄弟だし」
「養子だとぉぉぉぉぉぉぉぉッ?!」
「お前がまず驚くべきは義兄弟の方だろう三成?!」
「…ッだぁーはははははっ!!アンタの世界面白ぇなァ!」
ぷるぷると震えていた長曾我部が盛大に噴き出したのをきっかけに、愚者坂のに笑いの渦が巻き起こる。
追われていた小早川も、周りの笑い声に笑っていて、伊達と片倉も笑っていた。


それからはやんやわんやの宴会になった。王様ゲームも盛り上がり、始まったばかりの空気はどこへ行ったのかと思えるほどだ。
「石田ぁぁぁ!アンタ、婚約するんだって?」
「なっ…いや、私は、………そうだ、が……」
「真田は一体いつ式を挙げるんだ?」
「なっ!は、破廉恥なり!」
「どうせなら今やれ!」
「何を言っている!そんな適当に挙げられるか!」
「それにまだお館様にご報告しておりませぬぅぅ!」
「取り敢えず挙げる気はあるんだな!楽しみにしているぞ!」
「家康家康!毛利が鶴の字の物真似する事になったぞ!」
「嫌です〜!」
「……。宵闇の羽の方ー」
「って棒読みじゃねぇか!」
「喧しいわ超スケベ元痴漢」
「ううううるせー!」
「…幸村」
「ぅおぅ?どうした、黎凪」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ長曾我部達を見て、宮野は笑いながら真田を見上げた。
「…私、頑張ってきて、よかった。諦めないでよかった」
「!…そうだな」
「!」
真田は宮野の言葉にふ、と笑うと宮野の額に口付けた。宮野の顔が僅かに赤くなる。
「Hey!真田がイチャイチャしてやがるぜ!」
「な、なっ!別にイチャイチャなど!」
その宴会から、笑い声が絶える事はなかった。



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