もうお前を離さない362

『俺はお市の方かな』
『……まつ、かな?』
『うわ、何アンタ等人妻チョイスー?!』
続いた上泉と川中の言葉に谷澤はぎゃーと悲鳴を上げそう突っ込んでいた。
『…待て待て!ちゃうちゃう人妻ちゃう!つうかそれ言うならお市の方は未亡人だろ!俺はミステリアスなのが好きなの!』
『俺は文武両道だからいいなと思っただけだー!…宮野っぽくて』
『うわー!上泉まだ引きずってんの?!』
『お前に片思いの後輩だって弓道部じゃねぇか』
『なんでお前が知ってるんだー?!』
「騒がしい奴らだな…」
ぎゃーぎゃーと騒がしいそれに石田は眉間を寄せ、片耳を手で塞いだ。村越と宮野は苦笑する。
『斯く言うお前は誰なんだよ!』
『私?私はあれだよ、松永久秀と徳川家康』
「ワシ?!と、松永!?」
「どういう趣味してんだこいつ…」
『松永は言ってる事が好きなだけだよ。そういえば、よくは知らないけど、宴では絡みあるんでしょ?』
『あぁ、松永が家康の首持ち上げてたね』
『うわ、何それ最低』
『って事は一番は徳川家康か』
『あのへそだしのどこがいいのさ?』
『一番人間くさいじゃん、家康。伊達政宗なんか片手で刀三本持つわ英語喋るわ手綱持たないわ滅茶苦茶やん!』
「てめぇ…!」
「わー!落ち着け独眼竜!な?!」
谷澤の言葉に怒りを顕にする伊達を隣の徳川は慌てて止めた。
『…空飛んでるけどなー』
『あれは本多忠勝でしょー?まぁ嫌いな所もあるけどね』
『え、あんの?』
『家康ってさー自分の心隠してるじゃない。いっつも笑顔浮かべてるけど、本当に笑ってる所って少ないと思うのよね。そういう点では家康って一番孤独な人だと思う。で、他人を心に入れない人。見てるだけで悲しくなってくる。そこは嫌い』
「…!」
徳川は驚いたように自分の顔に手を当てた。
「…相変わらず漓帆の言葉は突き刺さるなぁ…」
「え…っ?えぇっ?!」
「おい、家康が真っ赤になりながら困惑してっぞ」
「…。まぁ本題は毛利なのでスルーします」
「ぅおいっ」
「そうだ、毛利はまだなのかよ」
『…ふーん。芽夷は?』
不意に聞こえた言葉に今度は村越が飛び上がった。
「そういや私もいたんだった!」
「これで石田以外を言っていたら大変だな?ふふ…」
「孫市さん!えぇぇ覚えてない…!」
『私BASARAほとんど知らないからなー…』
『黎凪と映画は見たんでしょ?』
『うんー。だからメインの4人しかよく知らないけど…その中なら石田三成かなぁ』
「「!!」」
石田は驚いて村越を見、村越は自分の発言に驚いていた。
『えー意外。伊達って言うかと思った。三成のどこ?』
『確かにイケメンだけど…石田三成の、あの忠誠心?が』
『…あー』
『強いし、自分の意志が揺るがないし。あぁいう生き方って普通出来ないじゃない。そこは格好いいと思うなぁ』
「あーやだ恥ずかし…!」
「…ッ!」
「石田、顔が赤いぞ?」
「気のせいだ!私を見るなッ!」
『で、光美は?』
『んなもんおめー、毛利様に決まってんだろ』
『毛利?!しかも様付け!』
「あ、来た」
山中の声に周りは僅かに静かになった。
『えー?!どこがいいんだよ!』
『おま、嘗めんなよ?俺捨て駒友の会会員ナンバー記念すべき1000だからな!』
『1000人もいんのかよ!』
『毛利軍ツアーにも学校さぼって行ったよ、俺はな、波を漂流中の長曾我部よりは役に立つ捨て駒なんだぞ羨ましいだろう!』
『羨ましくねぇよ!』
「おぉい!波を漂流中の俺ってなんだ!」
長曾我部はぎゃーと怒鳴ったが笑われただけだった。