もうお前を離さない361

「みんな!今日は素晴らしき日だ!大いに飲み、食べてくれ!!」
日没後。関ヶ原の地には煌煌と灯りが灯り、徳川の言葉を合図に盛大な酒宴が始まった。
わぁわぁと一気に騒がしくなった地とは違い、愚者坂の上はどこかまだ重い空気が流れていた。
輪になって座っている彼らを振り返った徳川は苦笑する。
「…まぁ、なんだ。ワシ等も乾杯するとしよう」
「…………」
「……………」
「テンション低いなー」
「み、宮野殿!」
ずけ、とそう言った宮野に徳川は慌てたようにそう言ったが、宮野は不意に懐から筒を取り出した。
「と、いうわけで王様ゲームやるぞー」
「やるぞー」
「何をだ?」
「王様…game?」
きょとんとした武将達が宮野と宮野の言葉に乗った村越を見た。
「はーい説明しまーす。この筒の中には数字が書いてある棒人数マイナス一と大将と書いてある棒が一本入ってます。大将の棒を引いた人が、好きな事を命令できます。命令された人は絶対従わなければなりません。しかし、あまりに酷い命令だった場合は多数決で決めます」
「…なんじゃそりゃ…」
「面白そうじゃねぇか」
難色を示した黒田に対し、伊達は楽しそうに身を乗り出した。
「Hey.具体的にはどうやんだ?」
「何番と何番がこうしろとやりたす。三番が二番の好きな所を言え、みたいな感じにやります」
「おぉ…数字を引いたらひやひやするでござるな」
「このままどんよりしてても面白くねぇ。やろうじゃねぇか」
「そうだな!このままでは話も弾まない」
盛り上がる面子に、日和見だった他の面子も混じり、なんだかんだで王様ゲームをやる事になった。

「はい、大将だーれだ」
「お、俺だ」
「元親か!」
「…ってぇ言われてもなァ……。…ぃよし!二番!七番に思ってる本音を言っちまいな!」
「酔ってもいねぇのにterribleなもん出したなアンタ。おい、誰だ?」
「…七は我ぞ……」
「わ。本当だ、毛利さん七番だねぇあはははは!」
「…貴様なにがおかしい」
毛利は左隣に座った前田をぎろりと睨んだ。その右隣では大谷が肩を震わせ笑っていた。
さらにその隣の石田の隣の村越はあ、と小さく声を上げた。
「…二番私です…」
「村越殿が二番にござるか!」
「…え、黎凪どうしよう」
「へ?」
村越は隣の宮野を振り返ると、真面目な顔で、
「私毛利の事何とも思ってない」
と、言った。
ぽかん、としていた宮野だったがしばらくして吹き出した。長曾我部に至っては大爆笑している。
毛利は忌々しげに長曾我部を睨み、さっさとせよ、と村越も睨んだ。
「でもなー…。…あ、そうだ。他の子のでもいいですか?」
「はー…はー…ッ。他の野郎か?別に構わねぇが…誰だ?」
「黎凪、ウォークマン持ってる?」
「ウォークマン?あるけど、はい」
「!?な、なんだそりゃ!!カラクリか?!」
ウォークマンを見た長曾我部は思わず身を乗り出した。楽しそうに輝く目に、村越はウォークマンが解体されるのではないかと顔を引きつらせた。
「あー…後で説明しますから。今はそれよりこっち」
「ウォークマンになんかあったっけ?」
『いつまでも帰ってこないねぇあの2人』
不意にウォークマンから谷澤の声がした。宮野は驚愕して飛び上がる。
「いつ録ったんこんなの!」
「いやー黎凪が思いだしたくなった時用に?」
「あれだろ、幸村とカラオケ行った時だな?!しかしなんで曲はトイレの神様なんだ!」
「だって長いから」
「…うすっぺらいこれは喋るのか…」
『ところでさ、黎凪は真田幸村と恋仲になっちゃったけどさ、皆はBASARAキャラだと誰が好き?』
ウォークマンから続く声に周りは僅かに静かになった。