見えないはずの右目が19

「…何の用だ?」
ささっ、という擬音語があいそうな程手際よく着替えさせられた。着替えさせた張本人の小十郎はまた手際よく、今度は布団を畳んでいる。朝から一体何なのだろう。こんな朝早くから来たのは初めてだ。
「はっ?」
きょとんとした顔で振り返る小十郎。ぱちぱちと瞬きを繰り返す男に笑いそうになる。が、表情は変えずにもう一度、何の用だ?、と繰り返した。
ややあって小十郎は口を開いた。「…朝になりました故。朝餉の支度もできておりますよ」
「………いらない…食欲ない」

こんな朝早くに、普通は朝餉を取るのか。

信じられない、と梵天丸はややげんなりした口調だ。小十郎はそんな梵天丸に目を見開いていたが
「…いえ、それでも少しは召し上がってくだされ」
「いらない」
寧ろ食べれない!と言いそうになるがあまりに子供っぽいので耐える。
「…ならばせめて茶漬け程度を」
「………」
茶漬け。
朝から茶漬けは食べたことはないが、片倉がいうなら食べてもいいのだろう

梵天丸はしぶしぶと頷いた。