オカントリオの奇妙な旅路7

「…悪い」
「……そんなつもりはなかった、とは言わないんだね」
「誤魔化しても意味ねぇだろ」
「ヒヒッ、正直者で何よりよ」
吉継はくすりと笑って目を伏せ肩をすくめた。小十郎は吉継の反応に薄く目を細め、何か言いたげに口を開いたがすぐに閉じた。
佐助はその様子を見て何か考え込む様子を見せたが、何も言わず吉継に向き直った。
「…で、これからどうする?情報を探るにも、こう明るいと知ってそうなのもあまりいないよ」
「そうさな、まずは…拠り所を探すか。夜まで暫し休むが吉であろ」
「そうだな…丸1日歩き通しでここまで来たからな…少し疲れた」
「あ、俺様も…普段ならこれくらい大丈夫なんだけど」
「ならばまずは宿探しよ」
全会一致で宿探しが決まった三人は、その場で手頃な宿を探すことにした。



 その頃三成は。
「真田から文?……刑部の件か」
「いかが返答なされますか」
「分かりかねる。仔細が分かったら伝えると」
「はっ」
幸村からの文が届き、その返答を適当に返していた。今日に出立するために仕事を普段よりこなさなければならず、暇ではなかったのだ。吉継がいないこともそれに拍車をかけていた。
「石田。大谷はどうした」
「刑部は刑部で動いている。刑部に何か用か、毛利」
「どこにおるかは知らぬ、ということか」
「動き回っているからな。正確にどこにいるかは知らん」
「…………」
ばちり、と二人の間に小さく火花が散る。毛利はふん、と鼻を鳴らすと、ならば用はない、と言って背を向け去っていった。
三成も深くは言及せずその背を見送った。その視線は僅かに鋭い。
「石田様、東軍に動きが」
「何?」
そこへ、かた、と小さく音をたてて忍が三成の斜め後ろに降り立った。三成は忍の報告に眉間を寄せた。
「伊達軍が徳川軍に合流した模様」
「…家康が動くのか」
「否、動きはありませぬ。そして、隠す動きがありはしましたが、伊達軍の副将であり軍師である者がいない模様」
「軍師がいない?」
「は。片倉小十郎という男でございます」
「…分かった、下がれ」
忍は三成の指示に音もなく姿を消した。三成は忍の報告に、ただでさえ寄っていた眉間を寄せる。
「…真田の忍は忍でありながら副将だと刑部が言っていたな。誰だか知らんが東軍に属した副将もいない…これは何か関係があるのか?」
三成は小さく呟き、考え込む。
答えを考えたところで、三成には分からなかった。
「…くそっ、忌々しい…!」
三成は考えるのをやめ、さっさと動くべく仕事を片しにきびすを返した。

 「片倉殿がいなくなった?」
「Yes」
同じ頃、政宗は自軍の総大将、徳川家康に事の次第を報告していた。家康はきょとんとしたように政宗の話を聞いて首をかしげる。
「ワシが言うのもなんだが、片倉殿が何も言わずに消えるというのは…」
「あぁ。妙だ、尋常じゃあねぇ」
「身体に異常があるというのも…」
家康はそう言ってふむ、と口元に手をやった。