葱と牛蒡とツインテール20

「………」
「ヒヒッ、そう不服そうな顔をしやるな。そうあれもこれも、捕られ人たる主に教えられる訳はなかろ?」
「……そう、ですけど」
しきは吉継の言葉にそう答えるしかない。吉継は、ひゃっひゃ、と笑い、肩を揺らした。
「まぁ、主が我の問いに答えれば、我の見解を教えてやらぬ事もないがなァ?」
「!」
「さて、どうしやる?」
「…質問によります」
「素直でよい子よ、ヨイコ」
吉継はそう言うと、目を細めてしきを見据えた。白黒反転した目の色に見据えられ、しきは思わず後ずさる。
ぱし、と吉継は扇子を鳴らした。
「賢人殿より、これより先の事を主に言わせてはならぬと言われておる。恐らくそれは、これより先の未来を主に過去として確定されるを防ぐためよ」
「!」
「我は左様な事にはならぬとは思うておるがな。まァ未来の事など我にはどうでもよいのよ、全てはなるようになるしかない故なァ」
「……それ、で…質問って」
吉継はしきの言葉に目を細めた。布巾で隠れた先で、にんまりと笑っている、そんな感じがした。
「主はこの先の事を知っておるのに、無茶をしてあの男を庇おうとした…それは、主が知っておるこの先が、必ずしもそうなるとは主にも言えぬからよ」
「!」
「それは主にとってここが過去ではない故よ」
「…?で、でも半兵衛殿、は未来を過去とされるのは困るって…?」
「賢人殿も主にばかり気を回していられるほど暇ではないのよ。そうよなぁ、事実にされては困る、というのが正しいのであろ」
「……はぁ……」
「まァそれはさておき、どちらにせよ主の知る事実がこの先の事実にはなるとはまだ、現段階では言い切れぬな」
「…そう、ですね」
ひゃっひゃっひゃっ。吉継はまた、肩を揺らして笑った。
「賢人殿も用心なさるものよ…さて、我の問であったな」
「!」

「簡単な問よ。主の知る先の事実に…三成が傷付くことはありやるか?」

吉継の問に、しきは目を見開いた。しきの反応に吉継はひっひと笑う。
「…そう驚くことはなかろ?で、ありやるか?」
「それこそ…事実にされちゃ、困るんじゃ?」
「主は三成を同情の眼差しで見つめたそうよな」
「!あれはっ」
「その上、いざという時の話を多々したとか…その時点で予想はつくわ」
「なら、わざわざ私に聞かなくても、」
「ほう、やはりありやるか」
「!こんのっ……!」
口車にのせられたと理解し、しきは思わず声をあらげた。ヒャヒャヒャヒャヒャ、と吉継は楽しそうに笑う。
「なら、我もあまりのんびりとはしておれんよなァ、ひひひっ」
「…ッ……こっちなら平気か…」
「……こっち?」
しきは笑う吉継に半ば呆れたが、アニメ版の方では三成を裏切ることはないため、思わずそう呟いてしまった。
ぴく、と吉継の指がはね、視線が鋭くなる。その視線に、しきははっと自分のミスに気がついた。
「い、いや、なんでも、」
「…主が知り得る事実は、1つではないということか?」
「……だ、大丈夫ですよ、前提が違いますから…」
「前提?前提とは何よ」
「そんなこと言えるわけないでしょ!…知らなくていいことだって…」
吉継はしきの言葉に、ふむ、と呟いた。
「……やはり主は女よな」
「え……?」
何でもないわ。吉継はそう言って肩をすくめた。