Not revolved transmigration 134(終)

「いてぇっ!」
伊達は頭を抱えてしゃがみこんだ。豊臣は成実を見る。
「…片倉よ。貴様は政宗を責めたが、いなかった政宗は死にかけていたぞ」
「それはっ、」
「母がやったことだから自分は悪くない、そう言いたいのか。ふん!見ていて何もしないのは同罪よ」
「!」
「違うか?」
豊臣の言葉に成実はう、と詰まった。
「仕方がなかったで済むならば法などいらぬわ」
「…ッ」
「それからもう1つ気になることがある。吉継や慶次が潜入していた時点で片倉がいることは分かっていたはずだ。何故親族の貴様が参加できた?」
「…!」
伊達ははっとしたように豊臣の後ろから顔をのぞかせた。成実は気まずそうに顔をそらす。
「…正確にはもう、親族じゃねぇんだよ」
「……え……?」
「……景綱ももう、絶縁されてんだ」
「………!」
伊達は目を見開いた。豊臣は反対に目を細める。
「……言うなって言われてたけど、話すわ。俺は、景綱に無関係を装ってくれって頼まれてたんだ、二週間くらい前に」
「!!」
「……でも、お前がいると思ってなかったから、つい。…悪かった」
「……なんで姉さんはそんなこと…」
伊達は呆然とそう呟いた。豊臣はふ、と息を吐き出した後、ぽふ、と伊達の頭に手を置いた。
「…貴様に似ている」
「!!?!」
「……なぁ政宗!お前、帰ってこないか?」
「え…?」
豊臣の言葉に驚いたように豊臣を見た伊達に、不意に成実がそう持ちかけた。伊達は表情を変えられぬまま成実を振り返る。
「オフクロ、去年死んだんだ。だから、景綱が出たら、三人で暮らせねぇか?」
「…お…俺は……ん、んなこと言われても…」
伊達は迷うそぶりを見せた。豊臣は僅かに目を細める。
案の定、伊達が豊臣を見上げた。豊臣は小さく笑った。
「…好きにせよ」
「!………。成実、悪い」
「!政宗、」
成実は驚いたように伊達を見る。それは豊臣も同じだった。
「…悪ぃけど、今更戻れねぇ」
「そんなことねぇよ!」
「そうじゃない。…俺はもう、この人の息子なんだ」
「!」
豊臣が更なる驚きに目を見開いた。伊達はに、と成実に向け笑って見せる。
「だから、…正直、片倉に入るつもりはねぇ。俺は、伊達家の最後の一人だしな」
「…ぷ。そうだな。ま、お前がいる場所が分かっただけでいいか…景綱が出る日は教えてやる」
成実は薄々断られるだろう事を分かっていたのか、案外すんなりと引き下がった。わしゃわしゃ、と伊達の頭を撫でる。
「…じゃ、元気でな。豊臣さん。こいつ、よろしくお願いします」
「……うむ」
そしてそれだけ言って踵を返し、人混みの中へ消えていった。
「…本当によかったのか?」
「Ah?……何言ってんだよ、親父」
「!」
「幸村達待たせてるから急ごうぜ。親父も竹中さんにどやされるぜ?」
「…ふ、そうだな」
そして二人も、歩みを再開した。


記憶を持つ者。記憶を持たざる者。
「政宗殿ぉぉぅぅぅぅう!遅うござるよ!」
「あーはいはい悪かった」
記憶を取り戻した者。記憶を取り戻さぬ者。
「…やれ、騒がしいことよなァ」
「そのわりには楽しそうだね?刑部君」
「…ヒヒ、その名で呼んでくださるな。太閤と最初に会った時、太閤は名前で呼んで下されましたぞォ?」
「そういえば教えなよ」
「なーに話してんだよ、吉継!」
「元親、共にこれ食べぬか」
「へ?…なんだこのパフェでっか!!」
彼らの運命は悲しいまでに絡み合い、ほどけることはないのだろう。
Not revolved transmigration.
巡らない輪廻はいつか回りだし、そしてまた止まり、この複雑な彼らの因縁をどこまでも運んで行くのだろうーーー



Fin