Not revolved transmigration 132

それから、警察でのゴタゴタは長かった。片倉と尼子は公安に引き渡されてしまい、伊達の公務執行妨害は二人の逮捕で相殺されたため伊達は不服そうだった。
特に猿飛と風魔は騒ぎになり、連日ニュースを騒がせた。だが闡喪組自体はそこまで騒ぎにはならなかった。かつて逮捕できなかった負い目からあまり公開していないのだろう。久の死は、ほとんど報道されなかった。

ホテルで事件解決してから一週間後。落ち着きを取り戻した新日本覇王に、渦中の人猿飛、風魔と、片倉、尼子を除く当事者が集まった。
石田は深々と豊臣に頭を下げた。豊臣は困ったように笑う。
「…重ね重ね言うが、礼をされる事ではない」
「いえ、そういうわけにはいきません」
「まぁ、真面目な子だから、聞いてあげてよ。それより、いくつか報告があるって聞いたけど」
竹中の言葉に毛利が頷き、座るように促した。
「まず、あの日あった爆発だがな。あれは闡喪組の主要施設を破壊していたもので、天海他幹部の死亡が認められたらしい」
「!」
「…じゃあ片倉さんから連絡受けて尼子さんが動いてなかったら俺らも死んでたな」
前田がぞっとしたようにそう呟く。毛利はちらとそちらに目をやった後、黒田に目をやった。
「それから気になることがひとつある。孝高」
「?どうしたんでぃ」
「あの日爆死した松永久だがな。ひょっとすると生きとるかもしれん」
「え!?」
「何?」
「…説明しやれ」
驚きの声を上げた徳川と松永を横目に大谷が促す。
黒田はがしがしと頭をかいた。
「あの騒動の後、無論小生はすぐフリーになったからな、辞める前に奴さんが爆死した辺りの部屋の外壁を掃除される前に見てきた。……で、妙なものがこれだ」
「?血痕にござるか?」
渡された写真を最初に見た真田がそう尋ねると黒田は頷いた。
「片倉っていう女の話によれば、爆発範囲は少なくとも円形に直径175センチ。壁についてた焦げ跡、変形した窓枠から見ても、相当密度の高い爆発だ。仮に爆死したとしたら、それにより噴き出した血は爆発の中心からの距離から見ても壁につく前に蒸発する」
「ま…間違いないのか」
「お前さんは数学教師かもしれんが、小生も物理専攻なんでね。ついでに爆発にゃ詳しいんだ。間違いない。なのに血痕が残ってるのは妙だ。壁の平面についているから、飛び降りた時についた物じゃない。とすれば、爆風を僅かに浴びて血が飛んだ、としか考えられないんでね」
「……生きてる…別に彼女なら不思議じゃないのが恐ろしいね」
「…生きている……か」
「!社長さん、」
ぼそりと呟いた松永の言葉に伊達ははっとしたように松永を見た。
松永はすぐに肩を竦める。
「…ま、興味を無くしたのならもうしないとは思うがね。久は私が探しておこう」
「…そこで探そうとか言える辺り、アンタも相当ブラックだよな…」
「ふはは、だてに血族ではないよ。私は裏には興味がないだけでな」
「……。そういえば、市さんの旦那は見つかったの?」
「浅井長政か。見つかったぞ。喧しくて敵わなかったわ」
笑う松永を一瞬見た後目をそらし、竹中がそう問うと毛利が答えた。
ぎし、と長曽我部がイスにもたれ掛かった。
「…しかし大きなヤマになったなぁ。警察とも関わったしよ」
「…そうだな」
「三成君達は明日から学校に戻るんだったね」
「はい、そうです。宇都宮先生は一足先に戻っています」
「そう、よかった。……じゃあ、これで今回の件は解決だね」
竹中の言葉に一瞬部屋のなかが静かになった。
解決はした。だが、なんとなく後味が悪い。
それがメンバー全員に共通する思いだった。
「…だーもう!解決したんだよ、今うじうじ考えてもどうしようもねぇんだっつの!」
「ま、政宗殿っ」
不意に伊達がそう怒鳴った。