Not revolved transmigration 48

「アナフィラキシー…過敏症ともいう。体が拒絶反応を起こしてしまうから、最悪死ぬ場合もある」
「な…ッ」
「……秀吉さん。ファロー四微症には心室中隔欠損症が含まれてる。俺はファロー四微症の事とか定義以上の事は知らないけど…心室中隔欠損症でアイゼンメンゲル複合っていう症状が起きると、チアノーゼや喀血、心不全なんかを繰り返して30前後で死ぬって聞いた」
「は?!30前後って、吉継は今26だぞ?!」
「喀血は肺からの血を吐く事であろう。心臓病なのに肺も患うのか?」
「よく分かんねぇって!四つもなってる奴だからどうなるのか…でも少なくとも、外科手術が出来ないなら長生きは出来ない…」
「…成る程。余命がないから命に頓着しない訳だ」
「!兄さん…」
竹中の言葉に固まっていた石田ははっとしたように竹中を見た。
「病院に行く日だったみたいだけど、病院には何をしに?」
「内服薬使って少しでも抑えてるんだよ。その薬を取りに行くはずだったんだ。後発作が起きた時用の」
「…という事は大谷君の手持ちの薬は少ないのか」
「!!」
「吉継の居場所なら、吉継の数珠がGPSになってるから分かるはずだ」
「「何故それを早く言わない!」」
「あだっ!」
再び黒田の頭に2人の一閃が飛んだ。
「ならば話は早い!そのGPSを見てみよう」
ぱしんっ!と音をさせて鞭を伸ばした竹中はそう言い、毛利が目に見えない速さでキーボードを叩いた。
「…!出た」
「移動してる…この道路は環状七号線だ」
ひょこ、と毛利の後ろから画面を覗いた長曾我部はそう言った。
「分かるのかい?」
「たりめぇよ、俺の仕事は運搬だからな。にしても、ずいぶん北上したんだな」
「その数珠、GPSだとばれたりはしない?」
「あの数珠は吉継がいざという時、保護対象者に渡す以外、常に持っている。吉継なら奴らに取られるような事はしないと思う」
「よし。このGPSを見ながら動きだそう。…学生は待機、と言いたい所だったけど、納得しそうにないね」
喋りながら後ろを振り返った竹中は、3人の顔を見て困ったように笑った。
徳川はそんな竹中の視線を受け、真田、伊達と顔を見合わせた後勝ち気な笑みを浮かべた。
「ワシ等はまだ学生だ。所属している場所は社会に繋がっていない。大胆な動きなら、ワシ等の方が出来るぞ?」
「某、力技ならば早々負ける気はしませぬ!」
「…きっかけは俺だった。何かできるならしたい」
「…貴様等……。…、兄さん」
石田の視線を受け、竹中は薄く笑った。そして目を伏せると思案し始めた。
少しして目を開くと、竹中はふ、と笑みを浮かべた。
「秀吉、元就君はここで待機。元就君は無線で常時僕と連絡を取ってくれ」
「!…、よいだろう」
「うむ」
毛利は空気の変わった竹中に僅かに驚いた後、どこか楽しそうに笑い、豊臣も静かに承諾した。
「他の子は皆動くよ。政宗君、幸村君、そして元親君はこのGPSを追って移動開始。元親君、相手がこちらの動きを見ている可能性もある、直線ルートで追わないように」
「分かった!任せな!」
「ワシと黒田殿、半兵衛殿と石田先生は?」
がたがたと騒々しく部屋を飛び出した3人を見送った後、徳川はそう尋ねた。
「僕達はこのGPSを直線ルートで追う」
「え?」
「ここで相手に変わった動きがなかったら、相手にそれだけの自信があるという事だ。そして敵の最終目標は三成君の持つデータ。今までの動きを見るに、それを手に入れる為には手段を厭わないはずだ」
「…これを持っていくのですか?」
「あぁ勿論。これは相手を油断させるエサ」
「随分とまた大胆な…」
「家康君にはやって貰いたい事がある」
「?」
「追って君に話すよ。ほら、移動するよ!」