Not revolved transmigration 47

「そうか…ならもう聞かないよ」
「…。で、吉継が攫われたんだったな。…ん?そういやどこで?」
「2人が買い出しに行った帰りに会ったらしいよ」
「…って事は…。…あの馬鹿野郎!行く前かよ!」
「はぁ?」
露骨に顔をしかめた竹中を気に留めずに黒田は立ち上がり、途中何度か何もないのに転びながら社長室に走っていった。
「?何あれ」
「さぁ…取り敢えず戻ろうか、半兵衛殿」
「そうだね。あ、また転んだ」


 「社長!吉継攫われたって本当か!」
「でかい声を出すな!」
「君は僕を信用していないのかい!」
「あいだっっ!!」
社長室に入るなりそう尋ねた黒田に、毛利と竹中の一閃が飛ぶ。
毛利が持っていた指し棒と、何故か竹中が持っていた鞭に頭を強打され、再び黒田は頭を抱えた。
豊臣は僅かに呆れたようにため息をついた。
「…、で、どうしたのだ」
「どうしたのだ、じゃなくてだな!お前さんはなんでいつもそう冷静なんじゃ!」
「頭に血が上っては正しい判断は出来ぬ。……、その様子を見るとまさか、」
「?秀吉」

「あぁそうさ、吉継が今日行く予定だったのは病院だ!」

「病院…ッ?!」
石田は思わず立ち上がった。黒田は一度石田を見た後、すぐに視線を逸らした。
「…病院。何の病気だい?」
「ファロー四微症という、先天性心疾患だそうだ」
「心臓病にござるか?!」
「…秀吉さん。本当にその病気なのか?」
「?何が言いたい、政宗」
伊達は首をかしげながら黒田を見た後、豊臣を見た。豊臣も僅かに不思議そうに伊達を見る。
伊達は腕を組んだ。
「ファロー四微症。先天性心奇形の1つ。右心室肥大、心室中隔欠損等4つの奇形を合併している疾患を指す」
「ままま政宗殿?」
「動脈血に血中二酸化炭素濃度の高い静脈血が増加するから全身にチアノーゼを起こす。…チアノーゼは皮膚や粘膜が青紫色になる症状の事…その割りに大谷さんの皮膚は綺麗だった」
「知っているのか」
「…一応、志望、医学部なんで」
「えぇ?!そうだったのか!」
伊達は声を上げた徳川に苦笑した後、すぐに視線を戻した。
「それに、この病気は手術で治せる。赤ん坊の頃にするのが普通だって聞いたぜ。ファロー四微症は自然治癒しない」
「…政宗よ。チアノーゼは赤子の時にも起こるだろう」
豊臣の言葉に伊達は眉間を寄せた。
「?起こるに決まってんだろ、Blue Babyなんて言葉もある」
「ブルーベイビー…?」
「出産直後から全身の皮膚が青…正確には浅黒く見える子供もいるらしい」
「…不気味だな……」
「普通の女ならばまず捨てるであろうな」
「!」
毛利の言葉に伊達、徳川、真田はぎょっとしたように毛利を見た。
そこで何かに気が付いたらしい、伊達は口をぱくぱくさせながら豊臣に視線を戻した。
「ま、まさか大谷さん赤ん坊の時に捨てられたのか?!」
「親の顔も名も知らないそうだ。生まれた病院の院長の元で育ったらしい」
「さ…されど…院長の元で育ったならば、尚、何故手術をせなんだ?」
「…あいつはアナフィラキシーなんだよ」
「あな?」
「ふぃら?」
「なっ…」
黒田が忌々しげに吐き出した言葉に徳川と真田は首をかしげたが、伊達は目を見開き、そのまま固まってしまった。
再度首をかしげる2人に、石田が口を開いた。
「アナフィラキシーショックという言葉は知らないか」
「アナフィラキシーショック…?……聞いたことあるようなないような…」
「アナフィラキシーの人は麻酔を打てないんだよ」
「…え……?」
竹中の言葉に、2人は呆然と竹中を見た。