聖なる夜のハプニング77

「…?うわっ!?」
からり、と戸が開く音に半兵衛が振り返り、半兵衛は徳川の姿を見るなりそう声をあげて驚いたように立ち上がった。
半兵衛があげた声に家康も思わず飛び上がる。
「わっ!な、なんだよ竹中マネージャー…」
「あ、あぁごめん、なんかゲ「半兵衛、それより先は言うな。お前混乱しているだろう」
「そりゃするさ!君はどうしてそんなに冷静でいられるんだい!」
あまりよろしくないことを口走ってしまいそうになった半兵衛を制しながら、秀吉はくすりと小さく笑った。
徳川は僅かに驚いたように秀吉を見ている。
「……じょ、女性なのか?」
「えっ?あ、話していなかったか?というより、そちらでは男なのか!!」
「こちらへ来い、家康。その男が、お前のところへ現れた者か」
「あ、はい」
秀吉は徳川と家康の会話に小さく笑みを浮かべたまま、二人を手招きした。
簡素な高さの低い、折り畳めるベッドの脇に二人は正座して座る。秀吉は徳川をじ、と見つめ、目を細めた。
「…お初にお目にかかる」
「貴様の世界でのことは聞き及んでいる。貴様自ら我に会いに来るとは思わなかったぞ」
「…お言葉ごもっともだ、秀吉公」
徳川の話しぶりに、秀吉の傍らに座り直した半兵衛は、ふぅん、と小さく声を上げる。
その声に不思議そうに徳川がそちらを見れば、半兵衛は秀吉のベッドに肘を乗せ、頬杖をつきながら徳川を見つめていた。
「…半兵衛殿」
「君、僕は苦手なタイプだ」
「えっ?!あ、はぁ…」
「でも秀吉の言葉は確かに最もだ、何しにきたの?」
「半兵衛…」
ずけっ、とそう言う半兵衛に秀吉は難色を示すが、半兵衛はそんな秀吉をむっとしたように見、びし、と秀吉に指を突きつけた。
「だって彼、君の元に属しておきながら考えが合わないからって裏切ったんでしょ?普通に軍抜ければいい話なのに。そんなもの、僕がただで見過ごすと思う?」
半兵衛の言葉に徳川は僅かに眉間を寄せて視線を落としたが、そんな徳川には気がつかなかったか、家康ははぁと盛大にため息をついた。
「竹中マネージャー、あなたがそう過保護だから秀吉先生独り身なんですよ…」
「うっわぁ!ひっどい!ひどいよ家康君!君いつからそんな毒舌系になったの!」
「いや、ワシ昔からこんなんですし前もこのくだりあった気がします」
「いいもん貰い手ないなら僕がもらうもの」
「心にもないことを言うのはやめてくれないか半兵衛」
「半分くらいは真面目だけど」
「尚やめてくれないか」
「秀吉までヒドイっっ」
「…あ、あの……?」
突如目の前で繰り広げられるさながらコントのような会話に徳川はただただポカンとするしかない。その時になってようやく徳川の様子に気がついた家康は、不思議そうに首をかしげた。
「どうした?ワシらいつもこんなんだぞ」
「まさかの!!」
「えっ、そんな殺伐としてるの君のとこ」
驚く徳川に逆に半兵衛が驚き、半兵衛と秀吉は思わず顔を見合わせた。
驚きのあまりまたポカンとしている徳川に、秀吉は小さく笑って肩をすくめた。
「そちらは戦国時代だ。こう呑気にもしておれぬだろう」
「………秀吉公、あなたは……」
「どうせ我の事だ、そちらでは愛する人間を自ら排除するくらいのことはやってのけているだろう」
「…え?」
苦笑しながら秀吉が漏らした言葉に、徳川は大きく目を見開いた。
半兵衛は秀吉の言葉に眉間を寄せる。
「…君は自分を許すべきだ。自分を追い詰めたところで…」
「ふ、お前が言うか半兵衛。承知の上で我を支えていたのだろう?」
「それはそうだけど」
「…ちょっと待って欲しい、それは、どういう意味だ…?」
思いもしなかった二人の言葉に、徳川は座り直しながらそう尋ねた。