凶姫と龍人49

「お前…そんな若い…のか…」
「あぁ?俺は今年で19だぞ」
「?!」
家康は驚いて政宗を見た。家康は政宗と同い年だったからだ。
政宗は、どうでもいいか、と呟くと家康を戻した。呆然と自分を見上げる家康に、政宗はつまらなそうにふん、と鼻を鳴らす。
「…帰れ。二度とこの城に来んな」
「……あ……」
「俺はアンタ達になんの興味もねぇ。今更何なんだ。石田だって返しただろ。もうほっといてくれよ。過去のことなんざ、もうどうだっていいだろ」
「!」
「政宗!」
上のバルコニーから三成の声が響いた。政宗はそちらを振り返り、どこか嬉しそうに笑みを浮かべる。家康も三成を見上げ、だがすぐに視線をそらした。
政宗は家康の攻撃で崩れていたところから軽々と上に登り、三成の手をとった。
「…まさかまたアンタに会えるとはな」
「政宗…」
三成もどこか嬉しそうに笑う。
だがその時。
「がっ!」
政宗が呻き声をあげ、がくんと膝をついた。腹には最上の剣が貫通している。
三成はぎょっとしたようにそれを見、即座に刀を構えた。
「貴様ァァァッ!!」
三成は剣を抜いた最上めがけて刀を振った。最上は慌てて避け、追撃を剣に受けた。
家康もその様子にはっ、と我に帰り、政宗と同じように上の階に登る。
三成は振り抜いた刀を最上の首目掛けて突き出す。最上は顔をのけぞらせてそれを避け、後ろに下がる。
器用に避けていく最上に苛立ちながらも三成は追撃を続けた。横一文字に刀を振り抜いた時、最上が下から剣を振り上げた。予想外の攻撃に反応が間に合わず、剣は三成の刀の鍔に直撃し、刀が手から飛んだ。
「!」
「残念だがね齊藤君、政宗君には死んでもらわないと困るのだよ」
「…ッ貴様等のくだらん理由だけでぇっ!」
「くだらなくなどないのだよ、我輩にはねッ!」
「うあっ!」
素早く剣を返した最上の突きをなんとか鞘で防いだが、意外な重さに三成は弾かれ後ろに転んだ。
最上は政宗にとどめを指そうと剣を振り上げる。
「やめろ最上!」
登りきった家康が二人の前に立ち塞がった。三成と最上は驚いたように家康を見る。
家康はどこか泣きそうに顔を歪め、ぐ、と拳を作った。
「…すまん。だが最上。ワシはお前の為に彼を倒しに来たんじゃない。村の為だ。だけど、彼はお前が言うような奴ではなかった。…殺す必要はない、それが分かった」
「家康…」
「…三成、許してくれとは言わない、お前ではなく最上達を信じたのは確かだ。…最上、もうやめろ。お前が彼を殺しても、過去のことは何も変わらない」
「…っ」
最上は家康の言葉にう、とつまり、しばらく家康と睨みあっていたが、逃げるようにその場から離れた。
三成ははっ、と我に帰り、倒れている政宗に駆け寄った。
「政宗…ッ」
「…石田…三成………」
「すまない政宗、私のせいだ…ッもっと早く戻ってきていれば、」
「……いや、これでよかったのかもしれねぇ…」
「やめろ、そんなことを言うな、きっと大丈夫だ、諦めるな、」
三成は政宗を仰向けにして、上半身を抱き抱える。家康は二人を見た後、頭を垂れて背を向けた。