凶姫と龍人33

翌日、城の庭にて。
「…いつのまにか小鳥が増殖してやがる」
「ぞ、増殖…まぁ来い、この鳥達は人懐こいんだ

「そうなのか?」
「あぁ、私にもなついた」
三成はそう言いながら政宗をしゃがませ、手を出させた。三成はその上に鳥のエサを乗せ、手の周りにもエサをまいた。
「いいか?動くな。自分は危害を加えない、ということを体で示せ。そうすると寄ってくるぞ」
「…そうなのか?」
「私がそうだったから大丈夫だ」
「…ふーん……」
政宗はそう呟くとぴたりと体を動かさずに、近くに着地した小鳥をじ、と見つめた。三成は小さく笑って政宗から離れ、木の裏に回った。
被っていたフードを外し、きゅ、と胸元の服を握った。
ーーあぁ、この感情は何なのだ
ーー胸が、熱くなる。
三成は心のなかでそう呟き、空を見上げた。青く澄んだ空には雲ひとつなく、三成はむ、とむくれた。
「…私の悩みなどよそに晴れ渡った空だな……」
三成は肩をすくめて、木の影からそ、と政宗を覗いた。
大して離れていないのに、何故か政宗の体には至るところに小鳥が止まっており、三成は思わず噴き出した。
「ふ、はははははっ!き、貴様…ッ!」
「!テメェ笑うん、じゃっ?!」
政宗が思わず声をあげると、ばさばさと小鳥が一気に飛び立ち、政宗はうわわわ、と言いながら体を振るった。
「す、すまん、思わず面白くてな、」
「…コノヤロ」
政宗はにや、と笑うと足元の雪をわさわさと集め始めた。三成も笑い返し、素早く雪玉を丸めて投げつけた。
ちょうど大玉の雪玉を持ち上げていた政宗の顔に雪玉はヒットし、驚いた政宗は雪玉を落としてしまって雪に埋もれた。
「てんめぇぇえ!待ちやがれ石田ァ!」
「ふはははは、捕まえられるものなら捕まえてみろ!」
三成は楽しそうに笑いながら逃げ出し、政宗も言葉のわりには笑いながら三成を追いかけ始めた。
上から眺めていた官兵衛はため息をついた。
「…もはや恋人にしか見えんぞ」
「リア充爆発しやれ、と?」
「リア充って何じゃ」
「ヒヒ、まぁよいではないか。仲良しこよしが何よりよ」
「…お前さんが言うと胡散臭いな」
官兵衛はそう言うと尻尾をぶるん、と振り、寝る体勢に入った。