Not revolved transmigration 51

竹中は困ったように笑った。
「…そんな顔はしないでくれないかな。今のは嫌味じゃないんだけど」
「………」
「君にとって過去の記憶は忌まわしいものなのかな?」
「、半兵衛殿」
「安心したまえ、この軽トラック、荷台の音は聞こえないよ」
竹中の言葉に徳川は再び軽く竹中を睨んだ。それから、ふい、と視線を逸らす。
「…別に、忌まわしいだとか、そんな風には思っていない。物心ついたときにはもう、持っていたから」
「へぇ?そうなんだ」
「?」
「僕は、最初からは持っていなかったからね。最初から持っているのもいるのか」
「…それってどういう…」
徳川の言葉に竹中はくすくすと笑った。
「僕は8つの時、旅行で関ヶ原に行ってね。そこで三成君が迷子になった時、突然思い出したんだ」
「8…?!」
驚愕する徳川に、竹中はまたくすくすと笑った。視線をパソコンの画面に落とし、肩を竦める。
「最初は戸惑ったよ。歴史をそもそも勉強していなかったから、竹中半兵衛なんて武将知らなかったしね。そしてあの時は焦りもしたよ。何せ、弟みたいに可愛がってた三成君がどういう人間なのか、分かってしまったからね。呪い殺されやしないか…」
「…………真田に礼を言っていったのは、そういう事だったのか。イマイチ分からなかったが、納得いった」
徳川の言葉に竹中は説明しないでごめんね、とすまなそうに笑った。徳川は何も言わず首を横に振った。
「僕は『竹中半兵衛』に憧れたよ。その結果が今さ」
「…半兵衛殿。石田先生は『石田三成』が嫌いだと聞いた」
「!」
「…途中で思い出すのは、きっとその人にとっては辛いことだろう、と思っていたんだが…。半兵衛殿は違うのだな」
竹中は徳川の言葉に驚いたように徳川を見た後、ふむ、と口元に手を添えた。
「…僕は子供だったからね。大人になって、自分というものが確立している人には受け入れがたいものだとは思うよ」
「…そうか。いや、その……真田と話したんだ。魂が残っているなら、いつ思い出してもおかしくないんじゃないか、って…」
「それは三成君の事かな?」
「三成もそうだし、正直、刑部も…」
「大谷君も?」
「…言葉遣いもそっくりだし、家も同じようだった。…考えられない事じゃない。それを言ったらキリがないんだが…」
「元就君もそうかもしれないし、孝高君や元親君も該当するね。……僕もそれは思ったよ」
「!」
「秀吉に聞いたんだ。なぜあんなに揃っていたのか気になって。たまたま、出会った時皆状況が悪かったのが雇った理由らしいよ。でも、秀吉は記憶が戻るかもしれない危険性は承知の上だそうだ」
「…元親や官兵衛はともかく…毛利は……今は、本当に元親と、好きあっているように見えた、だから…」
「だからだよ」
「え?」
竹中の言葉に徳川は顔を上げた。竹中はトラックの壁に背を預け、ふぅ、と息を吐きだした。
「あの4人は、秀吉の元に来た時皆状況が悪かったと言ったよね。…だからこそ、あの4人の結束は強いみたい。もし仮に思い出したとしても、今の状況なら支える事が出来る。…そう思っているそうだよ」
「…」
「彼らにはもう『自分』がある。むしろ、今1人になった方が危ない、とは思う。…どうなるかは分からないけどね」
「…。毛利だけ置いてきたのは…それもあったりする…のか?」
「ん?」
「院長が信長公だと聞いた時から、ずっと嫌な予感がしているんだ」
徳川はきゅ、と拳を作った。