もうお前を離さない270

「…!独眼、竜、何してん…!」
「っるせぇな!お前はだま「私なん…か庇うから…そーゆー目に…会…うんだって……」
伊達が宮野の言葉に違和感を覚えたとき、がしりと左肩が掴まれた。
「どけ…独…眼竜…」
「?!」
「どけ…!」
宮野はぐい、と伊達を押し退け前に出た。その際に、伊達の持っていた刀を奪った。
「お…ぉ?」
「おい宮野!無茶だ!」
「っ…うるせぇなァ…!!」
「は…?!」
突然口調が荒くなった宮野に伊達はぽかんと宮野を見た。宮野はふらふらしながら刀を肩に担いだ。
「どいつもこいつも…周りの人間ばっかり………」
「…?!」
「そんなに俺が嫌いなら……俺を殺せばいいだろう……!」
「…?なんだこの女。上物だから売り飛ばそうかと思ってたけどよ」
「頭がイカレてるなら売れねぇなぁ。どうする?」
山賊達は宮野に薬を盛った事で油断しているのか、宮野を囲んで好き勝手言い始めた。手ぶらな伊達は下手に踏み入れず、ただその様子を見ていた。
否、宮野の様子に、伊達は動けないでいた。
「……………ね」
「あ?何か言ったかぁ?」

「死ねって言ってんだよ」

宮野はそう呟いたかと思うと肩の刀を大きく横ぶりに振った。突然の事に数人がその刃に倒れる。
「な、テメェこのガキッッ!」
「ある人がこう歌った。敵はみんな殺すんだ、盟友よそれで一時安心だ、けれど味方も敵になるんだ…ってね。全くその通りだと思わないか山賊?」
「あぁ?!何言ってやがる!」
「仲間なんていないって事さ!信頼も友情も、些細な事で簡単に崩壊する!」
宮野はそう言ってははは、と笑った。ぶん、と刀を振り上げる。
「…お前みたいな人間が大嫌いだ。人間なんか―――嫌いだ」
宮野はそう言って地面を蹴った。男が突き出した刀を首を傾げて交わし、体当たりするようにその男に刀を突き刺した。
その男の体を蹴って刀を抜き、振り返りざまに別の男の頭に刀を振り刺した。斬りぬく事は出来ず、途中で刀がとまる。
宮野はち、と舌打ちをして刀を引いた。飛び散った血が宮野の体に掛かったが、宮野は気にもとめずに刀を手の中でぐるりと回した。
「まだやる?私強いよ?」
「…お、おい、なんでこいつ薬盛ったのに平気な顔してやがる…?」
「人の話は聞こうかー?」
宮野はへら、と笑うと男の面前に刀を突き付けた。
「政宗様!!」
「!!小十郎?!」
不意に片倉の声が響き渡った。次いで、空を裂く轟音がその場にいる全員の耳に届いた。
「な、な、な、なんだありゃぁぁぁぁ?!」
「あー…」
きゅいん、と音をさせながら目を光らせた本多が、山賊の上でぴたりと止まった。異形な本多に山賊達の顔がさぁと青ざめ、一斉に逃げ出した。
「政宗様ッ何事が?!しかもお怪我を…ッ」
「大したことじゃねぇ。それより、野郎がイカレたぞ」
「は…?」
「いかれたとは失礼な。私は至って正常ですよ」
宮野は伊達の言葉に不服そうに唇を尖らせると刀を放り投げた。
宮野の言葉に、伊達はぎらりと宮野を睨み付けた。
「じゃあさっき言ってたことは全部turthだってのか?!」
「何を怒ってんです」
「納得いかねぇな。アンタが信用出来なくなる」
「どうぞー」
「どうぞだと…?テメェふざけてんのかッ!!」
「ま、政宗様ッ」
かっとした伊達は宮野の襟を掴むと思い切り宮野の顔を殴った。片倉の制裁も聞かず、伊達はふらふらとする宮野の襟をまた掴んだ。