日輪の神様へ33

―エピローグ―

「長曾我部と毛利が手を組んだそうだよ、秀吉」
「…何?あの二人がか?」
「どうやら少しばかり厄介な事になりそうだよ。まぁ、それでも君の相手じゃあない」
「うむ。…問題は三成よ」
「……確かにそうかもね…」




「刑部」
「久しいな三な……いかにした三成。漸く身体が回復したと聞いたが斯様に落ち込むとは…槍の雨でも降るか」
「…長曾我部と毛利の事を聞いたか」
「…あぁ、同盟を結んだそうだな」
「…あの時私が妖怪に捕まりさえしなければこのような面倒な事にはならなかった!!私のせいで半兵衛様と秀吉様に…あああああ」
「落ち着きやれ三成、主の気持ちは分かった、だから落ち着け。…やれやれ、呼び出されたワケはこれであったか」




「厳島!厳島出てこい!」
「喧しいわ。社での謹慎は貴様が命じた事であろう。それとも天照大神がどうかしたのか」
「紀之介が部屋に籠もったまま出てこない、私はどうすればいい?!」
「はぁ?話をしたのではなかったのか」
「した。そしたら何故か真っ赤になってそのまま部屋に閉じこもってしまったのだ!」
「……佐吉よ、主が何を言ったのか知らぬが今一つ抜けている所は変わっておらぬようだな」
「?!どういう意味だ?!」




「元就」
「何だ」
「斥候から知らせがあった。豊臣が出陣の用意を始めてる。それと、大谷吉継ってぇ野郎が豊臣の野郎と合流した後、すぐ離れたそうだ」
「その者の足取りは?」
「中国方面に向かってるってよ」
「…恐らく豊臣は先に四国を攻めるであろうな。別動隊は尼子の元へ向かったはずだ」
「尼子に中国を攻めさせる、ってか」
「…そういえば富嶽はどうした?増強したと聞いたが」
「富嶽弐式の事か。完成してるぜ」
「ならば何も問題はない」
「はははっ、心強いな」
「……、元親」
「あん?」
「…死ぬでないぞ」
「…お前もな!」
「ふん」




毛利は船へ戻る長曾我部の背中を見つめた。
まさか、神に攫われた自分の元に長曾我部が来るとは思わなかった。きっかけがなんであれ、神を敵にすると分かった上で迎えに来た長曾我部に毛利は確かに喜びを感じた。
「………ふ」
毛利は薄く笑い、日輪を見上げた。
「やはり我は貴様の物にはならぬ。…、あやつ以外の物などには、な」
そう呟いた自分にも笑いながら、毛利は来たる戦に向け、踵を返した。










END