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もうお前を離さない360

「…………ダメだ。眼球取れてるぜ」
「な、なんとっ」
「あ、そうですか?そりゃ助かった」
「……。なんでだ?」
「視神経切られた時点で目は見えなくなります。筋肉や血管とも切除されてるなら、そこ抉る手間が省けました。…って事はこうすれば、」
「ぎゃぁぁあ!め、目が!」
「……本当アンタは女らしくねぇよな…」
目蓋と目の下を引いてぼとり、と眼球を落とした宮野に真田は飛び上がり、伊達は目を逸らしながら口元を引きつらせそう言った。
宮野はクスクスと楽しそうに笑う。
「そうですね。でも、ありがとうございました」
「…別に。じゃ、2人共また後でな。大将は日没と共に愚者坂に集合だとよ」
「日没?随分用意早いんですね…」
「確かにな。ま、だがそんな訳だ。遅れるんじゃねぇぞ」
伊達はそう言い残すと片腕を上げて去っていった。
ふぅ、と真田は息をついた。
「では急ぐか!」
「…幸村……」
「何だ?うぉ?!」
振り返ったらすぐ目の前にいた宮野に真田は驚いた。宮野は再びくすりと笑う。
「…、さっきので少し火ぃ点いちゃったんだけど」
「?………!!は、破廉恥な!」
「別にいますぐやれとは言ってないよ」
「だぁぁぁぁぁっ破廉恥でござるぅぅぅぇぁぁぁぁ!!」
「…戦終わったんだしさー……、一応考えてみてくれない?」
「だっ、だっ、だがだがだが…!」
「…本当のトコ言うと、なんでこんな事言うかってーと、幸村からは絶対来ないような気もするからなんだよ?」
「う……。…お、お前は…その、したいのか…?」
真田は顔を真っ赤にさせながら取り敢えず宮野を座らせ、その隣に座った。
「…そらまぁ。女なら誰だって、好いた人の子供作りたいもんさ」
「〜〜〜〜〜〜ッ」
「…まぁ、子供育てるのは、怖いんだけどね」
「…。怖い?」
「…ちゃんと幸せにしてあげられるか…。…どうやって育てればいいのか、全然分からないから…さ。自分みたいに、しちゃうんじゃないかって」
「…。……多分…お前が正しいと思うように育てればよいではないか。…、その、お前の母上殿のような事には、決してならんと、某は思うゆえ」
「………そう?…ありがと」
くしゃり、と頭を撫でてきた真田に宮野はそう小さく礼を言った。
「…だが!…その、や、やるのは怪我が治ったらだ!よいな?!」
「!!…ぶっ、あはははは!分かった、楽しみにしてる」
「怪我の治療をするぞ。…右目はどうする?」
「包帯適当に巻いとけば大丈夫でしょ」



 「政宗様」
「あぁん?…どうした小十郎」
「…不躾ながら…あの女子に、己を重ねておいでですか」
「………」
自分の陣地に戻った伊達は、片倉の言葉に口元に弧を描いた。
「……HA…確かに、そうかもしれねぇな」
「………………」
「…真田が宮野に惚れた理由も、宮野が真田に惚れた理由も分かる気がするぜ」
「…そうでございますか」
「だが急になんだってんだ小十郎?」
不思議そうに己を振り返った伊達に、片倉は深々と息を吐いた。
「…念のためご忠告をと思いまして」
「あぁ?!何をだ!」
「宮野は既に真田のもの。間違っても手を出すような事はなさりませぬよう」
「は?!俺が真田のモンを取るとでも思ってんのか!?」
「いえ、真田でなければ心配しないのですが…」
「ぅおい!お前な!」
疲れたようにため息をついた片倉に伊達はむしゃくしゃしたように頭を抱えた。

もうお前を離さない359

徳川は顔を真っ赤にして石田を凝視している。石田はそんな徳川に小さく笑った。
「貴様の方が蛸のようだぞ、家康」
「だ、だ、だってお前接吻って…!まさか、まさか…!」
「……なんだ」
「おおおお前、ちゃんと責任取れるんだろうな?!」
「きっ…貴様私がそんな責任も取れない情けない男だとでも思っているのか!私が愛してもいない女に接吻するとでも思うのか?!」
「そうは思ってないが…ただ物凄く意外だっただけだ!お前に、あ、愛する人が出来るなんて…!」
「なっ…貴様揶揄るな!その成長する子を見守る親のような目で私を見るなァァァァッ!」
「うぉわっ?!危ないな!」
直後に聞こえた金属がぶつかる音に村越は小さく笑った。そして、止めていた足を動かした。
「はい!そこまでです!」
「!あ」
「!!村越…貴様いつからいた」
「お二方が息切れしていた辺りからです」
「なっ…き、聞いて…ッ」
「すいません、つい」
楽しそうに笑った村越に、僅かに石田の顔が赤くなった。ぷいっ、と石田は村越から顔を逸らし刀を納めた。
「…盗み聞きなど認可しない」
「すいません。お二人が話しているのを…聞きたかったんです」
「………、……」
「ふん。…で、何の用だ」
「小早川は本当に鍋を作りにいったみたいなので、宴会は夜始まると思います。その前に休んでください」
村越はそう言うとそ、と石田の右腕をつかんだ。
酷使したその腕は僅かに熱を持っている。
「………分かった」
「徳川殿も、クワガタみたいなでかい人が探してましたよ」
「!?…た、忠勝か?!わ、分かった…三成!」
「なんだ」
「式の日取りが決まったら教えてくれ!」
「!!!!…ななななな貴様!」
「じゃあな!」
徳川はHAHAHA!と爽やかな笑みを浮かべ走り去っていった。
石田の顔は羞恥と怒りに赤く染まり、村越はきょとんと首を傾げた。
「…式?」
「!気に掛けるな!奴の戯言だ!」
「…?そうですか。なら、気にしません」
「…………。…その…腕は平気か」
「え?あ、はい、大丈夫です。さすがに少しは傷みますけど」
村越は右腕を持ち上げ、小さく笑った。石田はそうか、と小さく返すと村越に向き直った。
「……………」
「…………?」
何も言わずにじ、と己を見つめる石田に村越は再びきょとんとしながらも見つめ返した。
石田はつ、と村越の髪を掬うと口付けた。
「!!あ、あの…!」
気障な所作に村越の顔が赤く染まった。石田はくすりと優しく笑った。
「…何故だろうな。貴様といると、笑みが浮かぶ」
「!……よかったです…」
「………、貴様、目を閉じろ」
「………?!え、あの、」
「早くしろ」
「〜〜〜〜〜!……、…」
村越は真っ赤になりながらも目を伏せた。
石田は満足そうに、ふん、と鼻を鳴らすと、僅かに膝を折り、唇を重ねた。



 「Hey.真田ァ、入っても平気か?」
「?!ま、政宗殿!」
一方、武田軍陣地では、いつの間にやってきていたのか、陣幕の外から伊達がそう尋ねた。
驚いた真田の声色に伊達はくっくと喉を震わせて笑う。
「アンタのHoneyは泣き止んだか?」
「…余計な気遣いは無用です」
「アンタの右目が気になってな」
「!……政宗殿、」
「ししんけいとやらがどうのこうの言ってたが、実際どうなってんだ。俺は抉った身なもんでな」
「…私もよく分かりません」
「なら、ちょいと見させてもらうぜ。入るぞ」
伊達はそう言うと陣幕をばさりと上げて入ってきた。

もうお前を離さない358

「…情けなくて悔しいよ」
「情けないなど…」
「自分で決めた事だった。…なのに…」
「完全なものなどおらぬ!…お前が恥じるような事は何も、ない」
「…ありがと……幸村」
宮野はそう言って小さく笑うと静かに目を伏せ、俯いた。



 「どこまで行ったんだあの二人…ッ」
その頃村越は、消えた徳川と石田を探してうろうろとしていた。
あまりに2人が見つからないので村越は小さくため息をついた。
「ん?お前は誰だ?」
「?!…えっと……あ、そうだ虎の人」
「ん?!お前は俺を知ってるのか!?」
そして、宇都宮と出くわしていた。
宇都宮はぱちぱちと瞬きを繰り返し、村越を不思議そうに見ている。
「あー…宮野黎凪の知り合いで、村越と申します」
「あー!そうなのか!宇都宮広綱だ!よろしくな!」
「あ、はい、どうも。……あの、両軍の総大将達見ませんでした?」
「ん?石田は見たことないから知らないが、徳川なら見たぞ!黄色い奴だろ?」
「!どっち行きました?!」
「あの坂向かってったぞ。というより、戦が終わったって本当か?」
すぐさま走りだそうとしていた村越は、続いた宇都宮の言葉に慌てて止まった。
「は、はい。毛利が譲歩してくれたので終わりました」
「おぉー!終わったのかー!」
「毛利がなんだって?」
ずい、とそこへ更に尼子が顔を出した。宇都宮は興奮した様子で尼子を振り返り、がしっ、と肩をつかむと勢い良く前後に揺すった。
「やったやった!真田がついにやったらしいぞ!」
「テメ、ゆら、すんじゃ、ね、ぇっ!」
「あだー!」
「なんだろうこの漫才コンビみたいの…。…取り敢えず追い掛けるか」
村越はひとまず2人を放っておくと、今度こそ愚者坂に向かって走りだした。
 少しして、村越は愚者坂の下までたどり着いた。愚者坂の周りは静かで、2人の会話が聞こえてきた。
「ははは…ッ…相変わらず…やはりお前は……速いなぁ…」
「喧しい…家康ぅぅ…」
「そう…言うなよ……。……なぁ……三成、あの子とは、どこで…会ったんだ?」
「………拾った」
「ひろ……った?」
「姉小路が討たれた頃…上田に向かった……その時にだ…。道で………寝てた」
「拾ったってお前…ははは!他に言い方があるだろう?」
楽しそうな声色な徳川と、普段よりも饒舌な石田の会話に、村越は歩みを止めた。
2人の会話を聞きたいと思った。
「…しかし驚いたぞ?」
「何がだ」
「まさか…許されるとは思っていなかったからな」
「ふん。私とて、奴に会わなければ微塵も考えなどしなかった」
「…と、いうと?」
「……言われたのだ。仇を討った後…私はどうなるのかと。私の中の憎しみは消え去るのか…少しでも…平穏は、訪れるのか、とな」
「………そうだったのか…」
ざり、と砂がなる音がした。濁った金属音も聞こえ、どちらかが動いている事が分かった。
「…それ以外にも色々あったが、それで考えたのだ」
「そして、生きる為にワシを追っている、と?」
「…そういう事だ」
「……そうだったのか。あの子はお前の心を、晴らしてくれたんだな」
「…分かったような口を利くな。貴様にそのように語られると無性に腹がたつ」
「ははは、それはすまん。…ところで、お前、あの子とはどういう関係なんだ?はぐらかさずに答えろよ?」
「………さぁな」
「…ッえー?ケチだなぁ三成」
「ただ、接吻はした」
「へぇー。……。えぇぇぇぇっ?!」
「っ喧しい」

もうお前を離さない357

「……あのー…なんか怒ってる?幸村…」
ずんずんと進む真田に、宮野は恐る恐るそう尋ねた。真田はそれには答えず、ただ前へと進んだ。
 武田軍の陣営に着くと、真田は陣幕の中に入り、そこにいた他の兵達を人払いさせた。
「幸村ー?」
未だきょとんと首を傾げている宮野に、真田は僅かに苛立ち、目を細めると強引に宮野を抱き寄せ唇を重ねた。
「…ッ?!」
驚愕し慌てて離れようとする宮野に構わず、真田は口付けを深くした。
「ん…っ」
息苦しさからか、宮野の顔が僅かに歪む。真田はしばらくそのまま唇を重ねた後、静かに離した。
「…ッ……は…。急にどうしたのていったー?!」
真田はそのまま頭を下げると宮野の首筋に噛み付いた。
「噛むなら甘噛みにしてよ…どうしたの?」
「………ッ。俺に隠し事をするな!」
態度の変わらない宮野に、思わず真田はそう怒鳴っていた。宮野は驚いたように真田を見る。
「お前が斯様な態度を取るときはいつも何か隠しておる!俺に隠すな!そんなに俺は頼りないのか?!」
「…ご……ごめん…。意図的に隠してた訳じゃ、ないんだけど…」
激昂する真田に宮野はしどろもどろになりながらも謝った。
ふい、と気まずげに顔を逸らした真田をじ、と見た後、宮野は不意に真田に抱きついた。
「!黎凪、」
「少しだけ…少しだけでいいから」
「…!… 少しといわず…いろ」
真田は僅かに驚いた後、ぎゅう、と宮野を抱き締めた。宮野はぐり、と頭を真田の肩に押し付けた。
「…話してくれ」
「………割り切ってた」
「?」
「割り切ってた…つもりだったのに」
宮野はぽつり、とそう言った。その言葉に、真田はそれが母親の事だと察し、抱き締める腕に僅かに力を込めた。
「………割り切ってたつもりだった。なのに、落ち込んでる自分がいる。…それが腹立たしくて悔しい」
「…お前は何も悪くないであろう」
「……多分ね。諦めたはずなのに、諦めきれてなかったんだと思う」
「諦める…?」
「…心のどこかで…まだあの人に愛されたいと願ってる…」
「…ッ」

「認めてほしかった。……、愛してほしかった」

「皆まで言うな」
真田はそう言うと宮野の頭に手を添え、己の肩に押しつけた。宮野はふふ、と小さく笑う。
「愛してくれなんてしない。…分かってるのに、どうして諦められないんだろ?」
「……それは…どうやっても欲しいからではないのか?」
「……成る程。…あの人が死んだ時ね。私…確かに嬉しかったんだ。漸く解放された、って……」
「……あぁ」
真田は相槌を打つと、宮野の頭の上に己の頭を乗せた。宮野はきゅ、と掴んだ真田の上着を僅かに引く。
「…もう理不尽に怒られることも、否定されることもないんだ、って…。……でもきっと私は、悲しかったんだと思う。あの人が死んで」
「……………」
「もう…努力する理由が無くなってしまったから。私はずっと、あの人に『よくやった、頑張ったね』って言って欲しかった。その為に勉強も家事も頑張ってきた、のに…」
「……あぁ」
「少ししたら、また努力する気になれた。自分が自分を誇れるような自分になろう、って思って。……その時に、あの人の事は忘れたはずだった。でも、忘れられてなかったんだ。……今日それが分かった」
「…黎凪」
真田はさすさすと宮野の頭を撫でた。

もうお前を離さない356

「黎凪……?」
「……………」
宮野は真田に気が付かないまま、しばらく目を伏せた後にふいと真田に背を向けた。
「あ、黎凪…」
「おい。毛利はこれでいいとして、こいつはどうする」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」
「ん?あぁ金吾か。すっかり忘れていた!」
「…本音が漏れてるぞ家康……」
石田達の声に宮野はそちらに向かってしまい、真田は声をかけるタイミングを見失ってしまった。
「……うーん…どうしようか?咎めなし、…は、お前が納得出来ないな」
「当たり前だ!」
「ひぃぃぃぃぃぃっ」
徳川が石田をちらり、と見て言った言葉に小早川は震え上がった。
その輪に混じった宮野は、ふむ、と顎に手を添え呟いた。
「…どうせこの後宴会になりますよね?」
「うん?」
「…なるだろうな」
石田の言葉に宮野はぽん、と手を叩いた。
「じゃあ小早川殿はその準備係って事で。鍋でいいんで全員分作って、宴会終わったら片付けしてください」
「えっ?……う、うん…?」
「…面倒な仕事を任せるという事か?」
「皆疲れてるから、自分の分はともかく他人の分の用意なんてしたくないでしょう?」
宮野はにっ、と笑ってそう言った。
「じゃ、鍋任せます。あ、でも具材はちゃんと切ってくださいよ!」
「…そんな事より宮野殿達は手当て!傷の手当てをしないと!!」
「え?あーそうですね」
「あ、私は三成さんがしてくれたので大丈夫です…」
「あれ!?いつの間にしたんだ?!」
「火傷を放置しておけるか」
「あははは!本当にまぁ、いい夫婦だねぇ」
「「!!」」
宮野の言葉に、かぁぁ、と2人の顔が赤くなった。お、と徳川の目が楽しげに光る。
「お?三成、顔が蛸みたいだぞ」
「黙れ家康っ!!」
「そういえば刀の鍔、1つしかないと思ってたら片方は彼女に渡していたんだな。三成お前…!」
「いぃえぇやぁすぅぅぅぅっ!!そんな目で私を見るなぁぁぁッ!!」
顔の赤さが更に増した石田は、刀を鞘に収めたまま振り回し、逃げた徳川を追い掛けた。
「あはははは」
「黎凪…大丈夫?」
「ん?大丈夫だよ」
からからと笑う宮野に村越はそう尋ねたが、宮野はさらりとそう返した。
村越は僅かに目を伏せると、宮野をぎゅう、と抱き締めた。
「…ありがとう。そしてごめん」
「なんで謝るのさ」
「…ううん、いいの。じゃあ、私2人止めに行くね」
「頼むねー」
村越と別れた宮野は、くるりと踵を返して今度は毛利達の方へ走っていった。
真田はぐ、と拳を握り、ただそんな宮野を見つめた。
「あーもー!早速喧嘩しないで下さいね?!毛利殿も、宴会には来てもらいますよ!」
「ちっ」
「舌打ちしないでくださいね?長曾我部殿はこの富嶽燦式なんとかしてください」
「なんで名前知ってんだアンタ!」
「いいから早く!次、黒田殿ー?!」
「なんじゃあ!人を大声で呼びなさんな!」
「…えーと。枷は後でなんとかするので黒田殿はそのまま待機でお願いします」
「何故じゃぁぁぁぁっ?」
「さて、次は、と」
宮野はふぅ、と息を付くと、真田の視線に気が付き真田を見た。
「?どうしたの幸村」
「…指示は後にせよ。先に手当てをするぞ」
「え?いや、平気」
「いいから来い!」
真田は思わずかっとしてそう怒鳴ると、ぽかんとしている宮野の腕を掴み、武田軍の陣営へと歩きだした。
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