2014-3-8 23:56
「あの四バカは置いておいて、……全く何故このようなところでまで脱線させやるのだ」
「へーへースンマセーン」
「今は信頼のおける部下に研究室を封鎖させて誰も入れないようにさせてある」
「殺されねぇ?」
ことん、と首をかしげながら尋ねる政宗に、久秀は小さく笑う。
「ふふ、あれを殺せるのはこの世界にはそうそういないよ。それに、あれに万が一のことがあれば研究室を爆破するようにしてある」
「おいおい怖いなアンタ」
「私は自分勝手な人間でね。だが自分のモノを勝手に使われるのは嫌いなのだよ」
「…よくそれでそこまでの地位に行けたよなァ。キャリア?」
「まぁね」
「でたーーー」
「……それで?」
吉継はしっしと政宗を追いやると、久秀に先を促した。久秀は小さく頷く。
「今回研究室から離れた場所に出現したことを考えると特に彼らに研究室までご足労願う必要は無さそうだ、が、彼らが来たということはなんらかの媒体が提供されていることになる。何もないところから召喚するのは流石に無理だ。私の場合は、私の血と、同量の人体組織に含まれるもの」
「うわ、人体錬成かよ…手パァンの錬金術師じゃねえんだから」
「質量保存の法則と似たようなものだ。その錬金術師とやらは知らないが」
「…奴らの目的として考えられるのは三成と家康だが」
「………すまないが私は世情に疎くてね」
うーん、と久秀は僅かに考え込む様子を見せた後、すまなそうにそう言った。吉継は僅かに意外そうに久秀を見たあと、小さくため息をついた。
「三成はこの前の剣道の世界大会で個人6位、家康はキックボクシングのチャンプよ」
「ほぅ!それは凄いな」
「こちら側に出ていることを突き止めながら知らなかったのか貴様」
「…なるほど。そうなると、病院での採血経験はありそうだな」
「!」
久秀の言葉に三成と家康は目を見開き、思わず互いの顔を見やった。政宗と元親は顔を露骨にしかめる。
「…つまりワシと三成の検査の採血の血を勝手に?…き、気持ち悪…」
「…管理も糞もねぇな、おい」
「おそらくそうだろう、それくらいの権力はある」
「あーやだやだ、権力ってやぁーだ」
「だが、それならば何故伊達や吉継まで出てきた。それに、貴様の件で全く似ていないものが召喚されたのは証明されたはずだ」
四人のなかで一人冷静な三成の言葉に、久秀は降参と言わんばかりに両手を挙げた。
「さぁな。だが調べさせたら別庁内職員の不審死が何人か見つかった、他の者の召喚には彼らが関わっているとみて間違いないだろう」
「oh......」
「そして弾正の似ていなさは確かに証明になったが、弾正は実に危険人物だ」
「おやおや、これは随分な言い分だ」
「事実であろ、自覚がないなら持ちやれ」
「…………」
ずけっと吉継にそう言われ不愉快そうに顔をそらした松永に伊達や長曾我部は小さく吹き出し、顔をそらした。久秀は気にせず指を立てる。
「そうした人間を欲していたと考えれば、体術的な実力を持つ二人のそれを欲しがると考えられなくはない」
「……反吐が出る」
三成はチッ、と舌打ちしてそう言い捨てるように呟いた。