初日から12連勝して、今度こそは横綱か?と期待を持たせたが、白鵬との大事な一戦で星を落とし、その影響からか、翌日の鶴竜線では痛い黒星を喫し、ついに横綱への夢は絶たれてしまった。

しかし、千秋楽の日馬富士戦では素晴らしい攻めを見せて勝利し、13勝を獲得して名古屋場所での横綱への夢をかろうじて繋ぐことが出来た。

日馬富士戦での戦いぶりを前日の鶴竜戦で出すことが出来ていたら、勝てたかもしれないと思っても後の祭りか。

それにしても、今場所で目立ったのは、相変わらず、ここ一番と言うときに脆さを露呈する稀勢の里と、逆に、ここ一番の大事な取り組みで勝負強さを発揮する白鵬の強さだ。

時に、猫ダマシ、かち上げ、変化、張り手と、横綱らしくない取り組みを見せる一方で、稀勢の里戦で見せた堂々たる横綱相撲ができるのは、数々の記録を塗り替えてきた白鵬ならではの技で、正真正銘の大横綱と言えるだろう。

体力的に衰えているから、色んな奇策を使っているのだろうとの声もあるが、年齢を重ねて行けば、それは当たり前のことであって、それを補うために、技を磨き多彩な技を繰り出して勝利をもぎ取って行くのも相撲の醍醐味であろう。

相撲は四十八手、その技を自分の物として使いこなしているのだから、それを称賛すれこそ、非難するのは的外れであろう。

今場所は、白鵬の横綱として完成した姿を見せつけられた感じだ。通算1000勝まであと13勝、名古屋場所はそれを目指して奮闘するのだろう。

片や稀勢の里は、ここ一番の勝負で、立ち合いでもマッタがなくなり、思いっきりの良さが連勝に繋がったが、やはり、精神面での脆さが克服できていないような気がする。

たとえ連勝を阻止されても、翌日は心機一転、本来の自分の相撲をとって勝てるようになれば、横綱の可能性は一段と大きくなることだろう。

白鵬を倒さなければ横綱になれないのだから、白鵬の胸を借りて稽古するしかないのだろ。

それにしても残念なのは照ノ富士だ、懐が深く、粘り強い相撲が身上で、もし膝の怪我がなければ、とっくの昔に、横綱になっていたかもしれない。

怪我にも関わらず無理をして13連敗という不名誉な記録を更新し、しかも、怪我が治らないのでは、踏んだり蹴ったりだ。やはり、休場して怪我を治すことに専念した方が良かったのでは、という気がする。

遠藤だって、10両に落ちてまで怪我を治すことに専念したおかげで、今場所は幕内で11勝もできたのだから。