作 又吉直樹
文藝春秋


職場の方にお借りして読みました!芥川賞受賞おめでとうございます!
又吉さんは独特のテンポが好きで、文学の面でもご活躍されているのをそっと書店で見かけていました(笑)
そんな又吉さんの文章を拝読するのは実は初めてでして、さらには普段あまり直木賞や芥川賞の本は読まないというか避けていたのですが(本屋大賞等の本は惹かれて読みますが、こういった賞の本は小難しいような合う合わないがあるような気がして…)、貸して頂けるということで職場で少しずつ読み、連休初日に読み終わりました。

この本の登場人物はさほど多くありません。徳永という芸人さんが主人公の話です。この徳永さんは思ったことをすぐに言葉にするのが苦手といったお笑いをやる上では不向きな感じなのですが、その分慎重に観察する方で、地の文でそれがよく表れています。
熱海へ営業で行った先で出会った先輩漫才師の神谷さんとの話がメインです。この神谷さんがとても特徴的な人で短絡的な人かと思えば、人とは、世間とか異なる独特な価値観で己の笑いを追究している人でした。

正直に言えば盛り上がりというものはほぼありません。最後の方はありましたが、どちらかといえば時に不可解な様子を見せる神谷さんと徳永さんとのやりとりが殆どです。そのやりとりは淡々なものでありながら、独特なテンポと笑いがありました。作中何度かこの徳永さんは又吉さん自身なのかなと思うところがありましたが、最後の方は実際とは異なっていました。異なっていたというか…神谷さんがあれというか…。一度親しくなれば優しい神谷さんが、そこまでなってしまったのも一重に笑いへの追究故なのでしょうが、ラストについてはこれから神谷さんはどうなってしまうのかという心配しかありません。また、そんな神谷さんを見放さない徳永さんにも人の良さが窺えました。

漫才をしている又吉さんだからこそ表現出来た面もあったのだろうなと思う場面もあり、時に辞書を引かねば分からない難しい表現もあり(それは私の知識のなさでもあります…)、淡々とした中に面白さもあった一冊でした。