作 司馬遼太郎
文藝春秋


松山に行った際、坂の上の雲ミュージアムで文庫版の一巻を購入し、読み始めてから気付けばもう三年近くも経っていました。
それがようやく、読み終わりました。
久しぶりです。こんなにも長編を読み終えたのは。
正直読むのが辛い時期もありました。正岡子規が亡くなった辺りです。それまでの秋山兄弟の成長や子規と真之のやりとりが楽しかった分、主人公の一人でもある子規の死は辛く、そこからは暗く苦しい戦争がメインになるのだろうなと思うと、なかなか続きに手が出せないでいました。
ドラマも原作を読んだところまでは見て、まだずっと録画だけ残して見れないでいました。
放置していた期間、他の本を読んだりしていましたが、どうにも気がかりで、その後の秋山兄弟はどうなったのか、やはり最後まで読んでその終わりを知るべきだと思い、文庫の続きを購入出来たのは今年になってからです。子規の死を読んでから丸二年が経っていました。

日露戦争がメインの巻が続き、遼順、二〇三高地、バルチック艦隊。
坂の上の雲は小説ではありますが、作者の司馬先生が実際に生存された方々からお話を聞いたりしたものが基にもなってますので小説であると同時にノンフィクションの戦争記にもなっているのです。
二〇三高地の場面では、小学生の頃に父が見ていた映画『二〇三高地』の地獄のようなシーンが何度も何度も思い出されました。
真之がバルチック艦隊との戦闘の後に見た艦内。
これらは戦争というものがなした事実なのでしょう。
たくさんの人が国の為に闘い、命を落とした時代。
人が亡くなる小説というのは星の数ほどあります。けれど、これほどまでにその一つ一つが重く感じる話もないでしょう。そこには確か実際にいた人の命なのですから。

最後の巻では『雨の坂』というタイトルで締めくくられています。
日露戦争が終わった後の秋山兄弟、そして子規亡きあとの家族についてを、過分なく淡々と綴られているのを読み、胸をつくような寂寥感でいっぱいになりました。
兄の好古は最後まで我が道をいくような人でしたが、弟の真之の戦争への思いと母への思いを見た上での最期は、読んでる側としてお疲れ様、と言いたくなる気持ちでした。

随分と真面目な感想になりました(笑)
しかしこの読み終えた後の感情を言葉にするにはまだまだ足りていないように感じます。
最後に、この『坂の上の雲』を紹介してくれた友人に感謝を述べて、終わります。